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初戦 ページ35

「チッ」


思わず舌打ちが漏れる。


試合が始まってもうだいぶ経っている。1セット目はこっちが取れたからよかったものの僕の調子は悪い。


まだドンピシャであげられてないし、身体も動ききらない。


「Aの調子、あがらんな」

「目立ったミスはしてへんけどAはイラついてるみたいやしな」

「侑の方は良さそうですけどね」


そう。僕と対照的に侑さんの調子はすこぶる良い。サーブも良くてサービスエースもバンバン取ってる。


それがなんともまた気に食わない。


その上、相手の梟谷は1セット目に崩したはずのエースが調子を取り戻し始めてる。木兎さんも厄介だけど赤葦さんも大分厄介。


木兎さんの手元を見ていると大きく振りかぶった腕が肩から曲げられ超インナースパイクが決まる。


ブロックを切り裂くような一打。流れを全て持っていくような、閃光のような。


ボールが落ちたのは僕が腕を伸ばした左横。見えてないわけじゃなかった。


「まじか。サイアク」

「今のは気にすんなや。次、一本で切るで」

「はい」


目の前が急にクリアになる。見据える先はコートの向こう。こっち側じゃない。


調子が悪いとか気にしていられない。


次はあげる。今はそれだけに集中。


ゆっくり深呼吸をする。向かってくるボールのコースに入って全身を使って勢いを殺す。


キタ。ドンピシャ!


そのボールを侑さんがセットしてアランさんへ持っていく。綺麗に決まったこっちのエースの一点。


「ナイスキー、アランさん」

「Aも吹っ切れたみたいやな」

「はい。あげてなんぼですから」


アランさんと短く言葉を交わして視線の先を梟谷に戻す。


負けられない。この一戦を、一球を僕が落とすわけにはいかない。









長い笛の音が響く。一戦目の勝利はセットカウント2対0で稲荷崎。


僕の高校での全国大会初戦、足りないものばっか。勝ったけど僕はほとんど勝利に貢献してない。ドンピシャも片手で数えられるだけ。


礼をして握手をする。


「……春高は勝つよ」

「その時までに超インナースパイクもあげられるようになっておきます。……それから、赤葦さん、僕、今日の試合木兎さんのスパイクで目が覚めました。木兎さんってすごいですね」

「うん。木兎さんは凄いよ」


どこか誇らしげな赤葦さんから木兎さんのエースとしての姿が見える。


握手を交わした手を離して、片付けをする稲荷崎のところに行く。


次はあげる。荷物を持つ力が自然と強くなる。

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蓮夜 - 面白かったです。主人公が凄くかっこいいし、兄のことをにぃといってるギャップが良すぎました。お疲れ様でした! (5月14日 23時) (レス) @page48 id: 574d664119 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 今一番楽しみにしてる小説です(T . T)これからも応援してます〜! (2020年5月2日 11時) (レス) id: 008e34b9a1 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - 続編おめでとうございます!めっちゃ好きです。これからも応援してます。更新頑張ってください! (2020年4月30日 21時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りろ | 作成日時:2020年4月30日 21時

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