過去３ ページ19
「ご飯できたよ。……あれ、ワカは？」
「風呂入ってる」
「了解。じゃあよそぐのは待ってた方がいいね」
「あぁ」
ダイニングの椅子に腰をかけるにい。
どこか気まずい空気が流れる。
わかってはいる。多分にいはなんとも思ってなくて、僕が勝手に負い目を感じてるだけ。
今日のOBとのバレーで忘れていた感覚を思い出して少しセンチメンタルになってるんだ。
「にい、は、バレー好きだよね」
変なこと口走ったし、変なところで切れた。でもにいはいつもと変わらない穏和な表情を浮かべる。
「そりゃ、好きだよ」
「僕は好きじゃない」
「知ってる。昔からそう言ってるからな」
「でも練習は嫌いじゃないし、上手くなりたいとも思う。それに試合は楽しい」
「前にも言ったけど、それが好きってことじゃないの？」
「それは違う」
僕はバレーが好きじゃない。
けど気づいた時にはにいに連れられてバレーばっかりやってたから僕にはバレーしかない。バレー以上に楽しいと思うことも今のところないし。
でも好きとは違うと思う。僕の中では楽しいと好きはイコールでつながれない。
「今日、久しぶりに、にいの、ワカの、スパイカーの、背中、を見た」
「おっわ、と、え？ ちょ、どうした？」
舌がうまく回らなくておかしな滑舌になるし目頭が熱くなる。視界が歪んできてやっと自分が泣いてることに気づく。
そこからはボロボロだった。最近の部活のことを取り留めなく零す。
リベロにとってセッターに届いたボールがスパイカーまで繋がれないことがどれだけツライか。いくらあげても僕にはその先の景色が見えない。
にいは黙って背中をさすりながら全部聞いてくれる。
「バレー、辞めようかな」
「なら白鳥沢に来い」
僕の最後の一言を拾ったのはにいじゃなくて風呂から上がったばかりの毛先を少し濡らしたワカ。
「Aの実力は本物だ。白鳥沢でならAに見合う環境がある」
「それいいな！ ワカ、ナイスアイデア！ 来いよ、白鳥沢。今年の全中は無理でも来年活躍して高等部に上がったら俺とワカとバレーしよう」
「……ほんとに？」
「もちろん！ ワカが打って、俺が止めて、Aが拾う。出来たら俺たち最強じゃね？」
「そうだな」
いやでもセッターも必要かとブツブツ言うにい。それにワカが適当に返す。
閉じかけてた僕のバレーにまた道が開いた瞬間だった。
そして僕が初めて仲間を裏切った、見捨てた瞬間。
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蓮夜 - 面白かったです。主人公が凄くかっこいいし、兄のことをにぃといってるギャップが良すぎました。お疲れ様でした！ (5月14日 23時) (
レス) @page48 id: 574d664119 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 今一番楽しみにしてる小説です(T . T)これからも応援してます〜！ (2020年5月2日 11時) (レス) id: 008e34b9a1 (このIDを非表示/違反報告)
ogofumi(プロフ) - 続編おめでとうございます！めっちゃ好きです。これからも応援してます。更新頑張ってください！ (2020年4月30日 21時) (レス) id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りろ | 作成日時：2020年4月30日 21時
