【 168 】最深の世界で ページ20
ピッ ピッ ピッ ピッ
静かな狭い空間で、Aに繋がってる医療器具の音が響き続ける。
手足には硬く縛られて抵抗した痕。
何かを飲まされたのか、眠ったまま既に3日過ぎようとしている。
発信機は2人ともに付けていたが2つ共Aに取り付けられた形で、あの後すぐに警察から人員を増やして捜索したがみかちゃんの行方はわからない状態で。
翔「……A」
Aの中に入ってAの精神を探しても見当たらない。
真っ暗な空間に1人、佇んでいるような感覚に陥る。
こんな空間のどこにいんだよ、
元々ずっと、1人でこの空間にいたのかよ
なんかあったら俺に言えって…頭の中でもいいから伝えろって、言っただろ
暗闇の中、しばらく彷徨い続けているとポツン、と大きめのこたつ。
………ん？こたつ？
近づいてみると人形が5つ。
ってこれ、俺らじゃね？
青、赤、緑、黄、紫の服を着たどこか俺たちの顔に似ている人形達。
手を伸ばして触ろうとするとシュンッとこたつの中に全部引き込まれる。
こたつの布団をめくると、ぐるっと丸くなってる誰か。
…まぁ、1人しかいないんだけど
「やっと見つけた」
「………。」
「こんな所で何してんだよ。
ってかなんだよその人形」
「……何勝手に入ってきてんの」
「お前が目、覚さないからだろーが」
「そー、だけど」
と、見せたAの顔は現実よりも少し幼い。
10代？くらいの少女で。
「見せてよ、それ」
「やだ。私の」
「ちゃんと返すよ」
「見たら減る」
「減らないわ笑」
ぎゅーって抱きしめてる。
この広い暗闇で、あの家にあるこたつと俺たちに似た人形を抱きしめてるのはなんだか…
少しはAの心の拠り所になれてるって事かな
なんて嬉しく思う。
「なんで抱きしめてんの？」
「大事だから」
「寂しいからじゃなくて？」
「寂…しくない」
「嘘つけ笑。ちょっと出てきてよ」
俺の顔を見て、もそもそと中から出てくる。
やっぱりちょっとちっさい。なんなら筋肉も無さそう。
俺の様子を伺うようにじーーっと見つめてくる
「っ、ちょっと翔さん」
「うるさい」
「離して」
「無理。俺今寂しいから」
「何それ…」
「Aが全然目、覚さないから寂しいんだよ。
…あ、でも俺はここで会えるから独り占め出来るって点は良いか？」
「何馬鹿なこと言ってんの」
「鈍感娘は黙って抱きしめられてろ。
嫌だったらさっさと目覚ませバカ」
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作者名：ハルvolleyball | 作成日時：2019年4月19日 8時
