癒せぬ悲しみ ページ8
早朝、ベッドの端にギシッ…と重みがかかったのに気づき目が覚めた。
『ん…おかえりなさい……』
振り向くと、酷く疲れた様子の無惨が腰かけていた。
片手で顔を覆っているため、表情は見えない。
「……。」
そのまま動かない彼に、声を掛けようか迷っていると。
『…ッ！』
いきなり手が伸びてきて首を絞められた。
そのままどんどん力が強くなる。
肺が圧迫されて呼吸ができない。むせかえるような香の匂いにクラクラする。
『はッ……く、苦しぃ…』
頸が折れる、と思った瞬間、突然解放された。
ゲホゲホとせき込むAを呆然と見ていた無惨は、しばらくしてから
「…すまない。」
と呟いた。
…………………
Aは間接照明の仄かな灯りを、ぼんやりと眺めていた。
『…落ち着いたかな。』
隣に眠る黒いくせのある髪を、そっと撫でた。
見た目よりもフワフワで柔らかい。
「……いくな…花…。」
眠る無惨の閉じられた瞳から、涙が零れた。
黒死牟の言葉が蘇る。
”じゃ、わたしがその…無惨が待っていた、青い彼岸花ってこと？”
”そうだ。”
”……つまり、どういうこと？”
”すべてが重なり、月が最も効力を発した時…お前の真の力が発揮される。”
”……真の力？”
”陽光を克服し、完全体となる。…今のあの方にあるのは、青い彼岸花を取り込むことだけ、だ。”
大事に想っていた人を失った瞬間から、彼の時は止まったまま。
誰のことも信用せず、配下にすら安心できず。
人間ですらなくなり、己を責めて、過去を呪って生きてる。
『…眠っている時はこんなに穏やかなのにね…。』
寝顔にそっと囁いた。
苦しみを救えるのがわたしなら…力になりたい。
どんなに暴力を振るわれても。
たとえわたしが”花雅”の代わりでも。
『……貴方がこんな風に、泣かなくても済むようにしてあげるね。』
規則正しく上下するその肩を、優しく撫でた。
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (
レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります！ (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…！(おい) 更新頑張って下さい！ (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるこ | 作成日時：2020年7月29日 13時
