必要と、されたい。 ページ6
「……。」
『無惨は”いずれ1つになる”って言ってた。…わたし、いつか無惨に取り込まれるんでしょ。』
「……そうだな。」
『まぁいいけどね。わたしもう身内もいないし。居なくなっても誰も困らない。』
立ち上がり、数歩歩いて自身の手を太陽の方へかざした。
薄っすらと血管が浮かびあがる。
『無惨だけだもん、こんなにわたしを必要としてくれてるの。』
「………。」
しばらく静寂が続いた。
『黒死牟？』
「…なんだ。」
『黒死牟には、奥さんとか子どもはいたの？』
「……そんな時もあった。」
『そっかぁ…。じゃ、恋とかしたんだ？』
「いや、家同士の見合いだったからな。…もう顔も覚えていない。」
『えー？ でも結婚したんでしょ？嫌いだったらしなくない？』
「なぜそんなことを聞く？」
『わたしも一応17歳の乙女だよ？ 死ぬ前に……恋愛とかしてみたかったなって。』
同じものを食べて、同じ時間を共有し、自分を必要としてくれる人。
町に行くと沢山の家族連れを見かけた。
あぁいう”普通の人たち”は当たり前のように家族を作れるんだな。
恋をして、愛し愛されて、そして死んでいく−…。
『……いいなぁ…。』
わたしには一生縁がないんだ、きっと。
『もう選択肢、無惨一択じゃん？ ちょっとそれはなーって。』
恋って感じじゃないんだよね、と悪戯っぽく隣へ笑ってみせれば。
「……気難しいお方だからか？」
『ふふっ、わかってるじゃない。髪ももうちょっと短い方がいいなー。あと血色も悪い。』
「……それ以上は付き合えんぞ。」
『あははっ。わかってるって。…黒死牟がぶっ飛ばされちゃうもんね。』
「そろそろ行くぞ。」
『はぁい。』
立ち上がって歩き出した黒死牟の隣に、並んだ。
『…でもね。』
「？」
『わたし、自分が人間でもないような気がするんだよ。』
「……どういう意味だ？」
『だってさ、黒死牟…』
立ち止まり、背の高い彼を見上げた。
『青い血の人間って…見たことある？』
……………
産屋敷邸。
広間に布団が敷かれ、線の細い青年が夜空を見上げていた。
青年は傍らに控えている妻を呼んだ。
「あまね。」
「はい、お館様。」
お館様と呼ばれた青年は、月を見上げたまま呟いた。
「…今年は夏至と新月が重なる年だったな。」
「左様で御座います。」
「柱合会議を開く。”青い彼岸花”が開花するとしたら…きっとその日だ。無惨には渡さない。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (
レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります！ (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…！(おい) 更新頑張って下さい！ (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まるこ | 作成日時：2020年7月29日 13時
