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過ごす日々 ページ5

良いお天気だ。
わたしは茶屋の外にある椅子に座り、空を見上げた。
そして、少し離れた木立の茂みに声をかけた。


『あの…』

「なんだ。」
茂みがガサガサッと動き、のそりと人影が現れた。

『…そんなに沢山の目で見つめられると食べづらいんですけど…。』

「いい加減慣れろ。」

『じゃ、せめて隣に居てくださいよ。』

「…私は陽の下に出たら消える。」

『ふふッ、そうでしたね。』


わたしは食べていた団子を包んで立ち上がった。
木陰からこっちを見ている黒死牟を見て、笑いかける。
そしてそのまま一気に下半身に全神経を集中させ、地を蹴り上げた。

「なっ!!おいA!」
慌てる黒死牟の声が小さく聞こえる。

耳元で風が唸り、人の間をすり抜けるとそのまま森の中に飛んだ。



…………………



大樹が影を作る、小高い丘。高い場所にあるから風が気持ちいい。
ここなら大丈夫かな。

わたしは振り向かず、後ろに話しかけた。

『今日は遅かったね。』

「……また速くなったな、A。」
音もなく現れた黒死牟が、隣に座った。
はい、と団子を差し出すと「いや、いい」と首を振った。

『人間だった頃は食べたんでしょ?』
モグモグ口を動かしながら尋ねると、視線を逸らされた。

「……もう忘れたな。」



……………………



無限城に来て半年ばかりが過ぎ、少しずつ事情が呑み込めてきた。


祖父だと思っていた人物は無惨の手下で、ずっと見張られていたこと。
わたしの血は特別で、詳しくはわからないが無惨にとって必要なこと。
わたしは”花雅”という無惨の幼馴染の女性の生まれ変わりだってこと。

そして無惨は”鬼”で、彼の配下達も”鬼”。
もともとは人間だった…らしい。


無限城での生活は結構快適だ。
四六時中見張られていることを除けば。

基本的に外出は自由だが、必ず上弦の鬼がお供につく。
まぁ…何だかんだ面倒見のいい黒死牟と一緒になるのが1番多いけど。



『黒死牟からも言ってよ。鳴女さんてばすぐ”どちらへ?”って聞くんだもん。わたし逃げないのに。』

「仕方あるまい。お前はそれ程に特別なのだ。」
隣の黒死牟に向かってむくれると、彼はふっと微かに笑った。



鬼は人間を食い殺すらしいが、少なくともわたしには手を出さない。
今まで友達がいなかったわたしにとって、こうして冗談が言える相手がいることは嬉しかった。
たとえ”花雅”の代わりに殺される運命だったとしても。


『ねぇ黒死牟…わたし、いつ死ぬのかな?』

必要と、されたい。→←無惨の過去



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設定タグ:鬼滅の刃 , 黒死牟 , 不死川実弥   
作品ジャンル:アニメ
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります! (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…!(おい) 更新頑張って下さい! (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まるこ | 作成日時:2020年7月29日 13時

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