想いを馳せる ページ16
「これでお終いです！」
Aはアオイから渡された洗濯物を、物干竿に広げた。
沢山のシーツが風にはためき、まるで踊っているようだ。青い空に白い洗濯物が良く映える。
「いつもすみません、手伝って頂いて。」
お茶入れますね、とパタパタと戻っていくアオイを見送って、Aは縁側に腰かけた。
蝶屋敷に来て、数週間が経った。
身体の痛みはほとんど感じなくなり、寝てばかりいるのも気が引け、こうして屋敷の仕事を手伝っている。
Aは空を見上げた。
『平和だなぁ…。』
無限城での出来事を思い返す。
”お…お許しを…ひぃぃ！！”
ザシュッ！！！と骨が砕ける音とともに、強い血の香りが充満する。
怯える配下の頸を一切の躊躇なく吹っ飛ばす無惨。
”ッ！痛い…”
”愛しているぞ…花…。”
前兆なき暴力。狂気の滲む笑い声。
ついこの間まで現実だったはずの出来事が、もうずっと昔のことのように思えてくるから不思議だ。
「「「Aさぁん！」」」
呼ばれてハッとした。
縁側にいたA目掛けて走ってくる女の子達。
『きよちゃん、すみちゃん、なほちゃん。』
Aは蝶屋敷に仕える彼女たちを見てふふ、と微笑んだ。
傍まで来たきよがAを見つめ、ほうっ…とため息をつく。
「Aさんの瞳、青い宝石みたい…。」
Aは唐突な賛辞に目を見開いたが、『ありがとう。』と笑った。
「Aさん、羊羹好きですか？」「お煎餅もあります！」「お饅頭も！」
次々とお菓子を差し出して賑やかにはしゃぐ3人を見てAは、ざわついていた心が凪いでいくのを感じていた。
ここでは急に首を絞められたり、髪を引っ張られる恐怖に怯えることもない。
陽の差さない部屋に一日中閉じ込められることもない。
こびりついた血の匂いもしない。
朝起きて身体を動かし、食事をして眠る。
穏やかで優しい日々。
でも。これはいつまで続くんだろう。
しのぶさんは「元気になったらお教えしますよ。」と言ったきりで、わたしが何故ここに連れて来られたのかいまだにわからない。
それに墓参りの日以来会えていない黒死牟のことも、気になる。
わたしを逃がしたことで酷いことをされていないだろうか。
「…さん！Aさん！」
すみに何度も呼ばれ、肩を揺すられた。
『……あ、なんでしょう？』
考え事で気づかなかったようだ。
3人は顔を見合わせてニマッと口角を上げた。
「さては…好きな殿方のことですね？」
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (
レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります！ (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…！(おい) 更新頑張って下さい！ (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるこ | 作成日時：2020年7月29日 13時
