運命の日 −しのぶと義勇− ページ14
『…きれい。』
幻想的で怪しい美しさを放つその光を、Aは息を呑んで見つめる。
その青い光は墓石から移動し、Aの全身を包み込んだ。包み込まれた瞬間、全身が激しい痛みに襲われた。
『うぐッ…アァァッ!!』
息が出来ず、その場に倒れこむ。
ガンガンと耳鳴りがして、内側から焼かれているような熱に汗が噴き出す。両目の奥に、ズキン…ズキンと鈍痛が響く。
「A!」
突然苦しみだしたAに驚いた黒死牟。
支えようと咄嗟に出した右手が光に触れると、ジュッ!と痛みが走った。
「!?」
まるで陽光焼けした時のような跡がジワジワと広がっていく。
思わず数歩、後ずさりした。
『黒死牟、手が…!!』
わたしのせいだ。焦ったAは距離を取ろうと身体を引きずって遠ざかる。
『だめ!来ないで!』
近づこうとする黒死牟を制止するA。
光は尚も強くなり、眩しくて目が開けられない。呼吸が出来ず、視界がぼやけてきた。
わたし…どうなっちゃうの…?
痛みで意識が遠のく中、浅い呼吸を繰り返しながらぼんやりと考える。
このまま死んだら、いずれ無惨に見つかって食べられて終わりか。
大したことのない人生だった。
わたしが生まれてきた意味って、あったのかな。
こんなことなら、さっき最後のお願いしておけば良かった。
「A!」
…呼ばれてる…。
あんなに焦った声、初めて聞いた。
黒死牟は、わたしが死んだらちょっとは悲しんでくれるかな…。
Aはそこで、意識を手放した。
…………………
2人の人影が現れた。
「あそこですね」
蝶飾りが特徴的な女性がフワリと降り立った。
そのまま光の中心に横たわるAに近づく。
傍に膝をつき、眩しそうに眼を細めた。
手早くAの着物の袖をまくり、「失礼します」と素早く血を取った。
その血液の色に、ハッと息を飲んだ。
「……本当に存在したのですね…。」
しばらく何か考え込んでいたが、ふと振り向き、眉を潜めた。そして、
「冨岡さん、惚けていないで手伝って下さい。だから嫌われるんですよ。」と、その可憐な外見に似合わぬトゲトゲしい声を投げた。
呼ばれた男はかがみこみ、Aを抱き上げた。
「俺は嫌われ……たくはない。」
「そうですか。頑張って下さい。」
女性は素っ気なく答え、立ち上がった。
身体が浮く感覚に、Aはうっすらと目を開けた。
「大丈夫です。心配しないで下さい。」
Aと目が合うと、にこりと微笑んだ。
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります! (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…!(おい) 更新頑張って下さい! (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるこ | 作成日時:2020年7月29日 13時