運命の日 −序章− ページ12
無限城。
「黒死牟、明日は絶対にアレから目を離すな。」
「…御意。」
「行け。」
黒死牟を追い出した後、無惨は目を細め、恍惚とした表情で月を見上げた。
「……花、明日だ。明日、私達は完全に1つになる…。」
………………
『お願いッ! ちゃんと日が暮れるまでには戻るから。』
「ダメだ。」
『1回くらい1人で出掛けたいの!』
むくれる少女と腕組みする武士。
先ほどから2人は揉めていた。
「大体、あの方に許可を得たのか?」
『そんなの秒で却下されるに決まってるよ…。バレないようにちゃんと戻るから!』
「一緒に行く。」
『ねぇ…今日は大事な日なんだよ。』
「………。とにかく”今日”はダメ。」
Aはため息をついた。
はぁ…埒があかない。黒死牟は頑固だからな。
こうなったら−。
「途中で巻こうとしても無駄だぞ。」
『……。』
バレたか。
…………………………
今日は夏至らしい。
1年で1番、昼が長い日。
歩きながら横目でお供の位置を確認する。
そばの木立をぴったりとついてくる6つ目の男。
…なんだろう。あの冷静な黒死牟がこんなにムキになるなんて。
違和感。
まぁいい。
今日はどうしても1人になりたいの。
『あ!!』
Aはわざとらしく立ち止まった。
『わたしちょっと忘れ物しちゃった!取ってくる!!』
返す隙を与えないよう早口でまくし立てて、思いきり走り出した。
追われないよう日向を選び、わざと回り道しながら。
『…ごめんね黒死牟。今日はお母様の命日なんだ。』
…………………………
「……。」
駆けだしたAを見て、追おうと一瞬かがんだ。
こうなるだろうと予想はできた。
なのに何故、自分はこの場に立ち尽くしているのか。
最初は、憐れな娘だと思った。
所詮はあの方に利用されるだけの道具。
なのに。
”黒死牟−!!”
”お願いッ!黒死牟にしかお願いできないの…。”
”わたし、必要とされたいんだと思う。…たとえ身代わりでも。”
無邪気に自分へ呼びかける、声。
自分に自信がなく、笑顔なのにどこかさみしそうな表情。
必要とされたいと願う、その想い。
いつの間にか、年の離れた妹のように感じていた。
長く一緒にいるうちに、私の中にわずかばかり人間だった頃の感覚が戻ってきたのか。
あの方への忠誠を忘れたわけではない。
空を見上げた。太陽は高い。
日暮れまではまだ時間がある。
「……待ってやるか。」
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります! (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…!(おい) 更新頑張って下さい! (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるこ | 作成日時:2020年7月29日 13時