よそ者 ページ1
月明かりの下で、2人の人影が身を寄せあって座っている。
優美な女性が、傍らの少女の髪を撫でながら語り掛けた。
”A、今日のような静かな闇に、あなたの髪と瞳はよく映える。”
”ねぇおかあさま。わたしはどうしてほかの人とちがうの？”
”それはね…あなたが特別だからよ。”
”とくべつ、ってなぁに？”
少女が不思議そうに問うと、言葉が途切れた。
おかあさま、と呼ばれた女性は視線を上げて闇を見つめている。
”……おかあさま？”
少女がそっと声をかけると女性はハッとしたように振り向き、微笑んだ。
”……いずれわかるわ。”
………………………
炭の入った籠を背負い、靴を履いた。
家の中で炊事をしている後ろ姿に声をかける。
『おじいちゃん、行ってきます。』
「おぉ、気を付けるんじゃよ。いつも通り、暗くならないうちに戻りなさい。」
釜戸の火加減を見ていた祖父が、顔を上げて笑った。
空を見上げれば、なんとなく雲行きが怪しい。
『…雨になるかもしれない。』
目を閉じて、足に全神経を集中させる。腿からふくらはぎにかけて血液が集中するのがわかる。
徐々に体温が上がり、燃えるように熱くなってきた。
深呼吸する。
周囲に沸き立つ風で落ち葉が舞い、木々がざわめく。
髪が逆巻き、頬に当たる。
「よし！」
足元の爆風と共に、わたしは地を蹴った。
…………………
「はい、ご苦労様。」
『…ありがとうございます。』
最後のお得意さんに炭を届け、代金をもらう。
祖父が木を刈り、わたしが炭にして町に売りに行く。
それが仕事だ。
山奥に住んでいるから、町まではかなりの距離がある。
この走り方を発見してからは時間を短縮できるようになった。
「団子が出来立てだよー！！！！」
帰ろうと歩き出すと、菓子屋の呼び込みが耳に入った。
思わず近寄ると、みたらしの甘い匂いが鼻をくすぐった。
『……ッ！！』
たまにはおじいちゃんにお土産でも…と思案していると、肩に小さく痛みが走った。
「やーい！青目女！」
「異国人！」
「気味悪ぃ」
石を投げた悪ガキが、逃げていくのが見えた。
物心がついた頃から、自分が他人と違うというのは何となくわかっていた。
子どもというのは残酷だ。
自分と違う者に対して敏感で、容赦ない。
他の人は皆、白目に黒の瞳。そして黒髪。
でもわたしはちがう。
祖父に尋ねたことがあったが、はぐらかされてしまった。
わたしは一体、何者なんだろう。
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ねう。(プロフ) - 3年前に読んでハマって、昔のスマホに記録を残していて…3年ぶりに電源を入れて、見つけて即飛んできました…やっぱりこのお話すっごく好きです(泣) (5月27日 21時) (
レス) @page26 id: dee5bda7f0 (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - るりもちさん» ありがとうございます。ちょっと忙しくて更新が停滞気味ですが、励みになります！ (2020年8月16日 21時) (レス) id: caa70b2ac7 (このIDを非表示/違反報告)
るりもち(プロフ) - タイトルにセンスを感じました…！(おい) 更新頑張って下さい！ (2020年8月16日 18時) (レス) id: 4d1d493798 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - まるこさん» あ、そうなんですね。分かりました。失礼しました。 (2020年8月4日 19時) (レス) id: 47d2d41a3d (このIDを非表示/違反報告)
まるこ(プロフ) - みんさん» コメントありがとうございます。タイトルはわざと当て字にしています。紛らわしくてごめんなさい。宜しければまたお立ち寄りください。 (2020年8月4日 18時) (レス) id: d44de4af2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるこ | 作成日時：2020年7月29日 13時
