慣れないことはするもんじゃない（冨岡義勇） (ページ8)

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言っても伝わらないこともある　⑦ ページ8

会いたい、と思っていたらそこに想う人がいた。
会いたかったのは確かなのだが…急すぎても戸惑う。
まだ何も良い案は浮かんでいないが、どうやって誘ったら良いものか。

「…任務か」

考えがまとまらずやっとそれだけ言うと、Aは大きな瞳を細め、くすっと笑みを漏らした。

『はい。お館様にご報告に参りました。帰ろうとしたら冨岡さんが見えたので。…あっ。』

さぁっと吹いた風になびく、艶やかな獅子色の髪。
風に吹かれた羽織の裾を整える細い指。

美しい、と思った。

せっかくの機会だ。
どうする。

”このあと予定がなければ、一緒に甘味処に行かないか？”

誘いたいが、唐突で変に思われないだろうか。
急にどうしたんだろうと不審がられはしないだろうか。

いや、もうどう思われてもいい。
嫌われていると思われるくらいなら不審者のほうがマシだ。

「…このあとの予定は？」
俺に予定を聞かれたことが予想外だったのか、驚いたように目を見開いたA。

Aが口を開いて答えようとしたその時。

ぐぅぅぅぅぅぅ。

Aの腹の音が鳴った。