慣れないことはするもんじゃない（冨岡義勇） (ページ15)

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それはわたしじゃありません　④ ページ15

激務だったのであろう。頬はややこけているのに、羽織の中はなぜかふっくらとしているのだ。
わたしが？？？という顔をしていると。

「ほら、これ」
と、懐から袋を取り出した義勇。
団子の袋を脇に置き、受け取って中をのぞくと－…。

『…なにこれ。』

サツマイモがたくさん入っていた。

「出先で名物だと聞いたんでな。土産だ。」

なぜドヤ顔？

『それは煉獄さんの好きなものでしょ。』

「これもある。」

懐から別の包みを取り出した。中をのぞくと…。

「通りがかった店で、出来立てだった。」

おはぎじゃん。

『…それは不死川さんの好物です。』

お土産は嬉しいけどさ。

『なによ。わたしの好きなものだけ知らないの？』

そう、文句を言ってむくれていたら。
腕を引かれ、ふわっと抱きしめられた。
頭が彼の鎖骨に当たる。土やほこり、血に混ざる義勇の匂いに、胸の奥がきゅうっとなった。
混ざりあう香りが、死と隣り合わせだったことを物語る。

「……温かいな。」
ふっ、と笑う気配。

『ど、どうしたの義勇。』
急に抱きしめられて動揺してしまう。

「Aは温かくてやわらかい。…生きている心地がする。」
抱きしめられる力がほんの少し強まる。
わたしも隊士の端くれだ。彼の言いたいことはなんとなくわかってしまう。
わたしもゆるく抱きしめ返した。

『……冷たくて固かったら死んでるでしょ。』
会えて嬉しいのに、素直になれない。つい照れ隠しに意地悪を言ってしまうんだ。
本当は、帰ってきてくれて嬉しい。
お互いに明日の保証はない身だから。

『……義勇、おかえり。』

「ただいま。」

目を閉じて息を吸い込む。大好きな人の、大好きな香り。

「A、また刀を折ったらしいな。」

『げ、なぜそれを？』
不意に上から降ってきた言葉に、義勇の胸から離れて顔を見上げる。

「その団子の山を見ればわかる。詫びの品だろう。」

『……はい。』

「一緒に謝りに行ってやる。」
そう言うと、義勇は団子の袋を両手に持った。そしてそのまま歩き出す。

『え…一緒に行ってくれるの？』
わたしは慌ててその背中を追いかけた。

「帰ってきたらお前の好きなものを食べよう。」

『ホント？何々？』

なんだろ？鰻？お寿司？悪いなぁ♪
期待して聞き返すと。

「鮭大根だ。」

え？( ﾟдﾟ)

「お前も好きだと言っていただろう。」

それは好きな人が好きだと言っていたからです…とは言えず、歩きながら『…そうだね』と頷いた。