慣れないことはするもんじゃない（冨岡義勇） (ページ1)

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お薬はほどほどに。ページ1

「Aは今日も本当に美しいな。やはり俺の見込んだ女だ。」

「今日の任務は過酷でな…。しかしお前のような素晴らしい伴侶が待っていると思うと頑張れる。」

「お前の作った鮭大根はこの世で1番美味だ。また料理の腕を上げたな。」

「どうしたA」

『……。』

どうしたもこうしたも…。
『……冨岡さんこそどうしました…？』

「冨岡さんじゃない、義勇と呼べ。Aと俺の仲ではないか。恋仲なのに水くさいぞ。」

『……そうですけど、あなたは柱ですから。』

蝶屋敷に行ったときに『無口な人が饒舌になる薬はありませんか？』って何気なく相談したら、しのぶ様が何か企んでいるような笑顔で「まだ試作品の段階ですけれど」と、小瓶を渡してくれた。

それを今日の夕飯の鮭大根にこっそり振りかけてみたら…冒頭の会話に至る。
いつも無口で無表情な彼が、人が変わったように微笑みながらわたしを褒めまくっている。

自分でやっておいて言うのはアレだけど、にこやかで饒舌な冨岡さんは…ちょっと気味が悪い(←ひどい)。

あ、でもこの際だから、気になることは聞いてしまおう。
ずっと聞きたかったことがあるんだよね。

『冨岡さん』

「義勇だ。」

『……ぎゆうさん。』

「なんだ。」

『不死川さんとは親しくなれましたか？』

そう。
この不愛想な恋人は、本当は不死川さんと仲良くなりたいんだそうだ。
でもいつ聞いてもはぐらかされてしまう。

「不死川とはなかなか会う機会がなくてな。…そうだ、今から菓子屋でおはぎを買って会いに行こう。なぜだか今日は気分がいい。今日なら仲良くなれる気がする。行くぞA。」

『わたしも行くんですか？』

え、今から行くの？

「そうだ。…早くしろ。」

羽織を羽織ってさっさと玄関に向かう冨岡さんを、わたしはあわてて追いかけた。

後日、蝶屋敷。

「胡蝶てめェ…。Aになに渡しやがった。」

「なに、とは？」

「とぼけんじゃねェ。こないだ夜遅くに呼び鈴が鳴って、誰かと思ったら…おはぎを両手に持って微笑んでる冨岡が立ってたんだァ。」

「え！！…ふふふっ(笑)」

「「「え、あの冨岡様が微笑みながらおはぎを…！！？」」」←動揺するきよ、すみ、なほ

「夜中に微笑んでる冨岡…。ホラーじゃねェか。どうせAがなんか変な薬を頼んだんだろ。冗談じゃねェ。」

「それでお菓子は受け取ったんですか？…不死川さん。」

「…おはぎに罪はねェからな。」