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名前の好きなリンゴジュースを自販機で買って

ベンチに座って俯いている。
まだ俺の存在に気がついていない。


家出少女の頭に缶をコツンとぶつける。


「瑞稀、、、」


瑞「何してんの?」


「私、家出めっちゃ下手だよね?」


瑞「下手すぎ。

もっと行くとこあんだろ。」


あの兄貴と喧嘩なんて、珍しいどころの話じゃない。

原因も気になるけど、

狭い街で俺が最初に名前を見つけたことが


すごく嬉しかった。



「龍ちゃん、くる?」


瑞「うん、


今、人生でいちばん本気で走ってるんじゃね。」


フッと笑った名前を見て、敢えて聞かないことを選んだ。

俺といた時間だけでも、この子の心が軽くなれたらと思った。

缶を開けるのに苦戦している。


開けてあげると、ありがとうと言い終わる前に

美味しそうに飲んでいる。


かわいいとか美しいじゃなくて、

愛おしい。


そんな感情になったのは人生で初めてだ。

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作者名:榛遥 | 作成日時:2021年12月22日 0時

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