通り雨に花束を (ページ13)

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私たちが引っ越してきた場所は、

駅前のマンション。

頑丈そうで底冷えする冬から私たちを守ってくれているようだけど、

グレーで無機質な外見は冷たい印象で気に入っていない。

お父さんは火事を機に仕事は特に変わっていないけれど、

私と龍ちゃんが高校生になり落ち着いた頃

昇格したみたいで忙しそうだ。

龍「手洗ってきな。

グラタン温めておくから。
それから、薬を飲み忘れないこと。」

龍ちゃんがご飯を作ってくれて、

私がお風呂掃除と洗濯。

それから、私は療養。

火事のショックで私の心は少しだけ壊れてしまったようだ。

過呼吸や不眠。

口に出すことはしなくても、

龍ちゃんから話を聞いて優斗や瑞稀も把握はしているんだと思う。

今は症状も治まってきた方だけど、

お母さんの夢を見たり、スマホに残った昔の写真を見ると時々苦しくなる。

でも、必ずしもお母さんにつながるわけでもなく
原因は私本人にも分かっていない。

龍ちゃんが私から目を離せないのは、

私がこんな風に前に進めていないからだと思う。

それでも、これが私たちが取り戻した日常だった。