定家葛5 (ページ14)

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94輪目ページ14

「A、本当に警察行こ」

「でも証拠がないよ」

夕飯後。

輝気とあの人の話をする。

「でも…！」

「証拠がないと警察は動いてくれない」

「………なよ」

小さくて聞き取れなかった。

「何？」

「帰りなよ。母さん達のところに。そしたら怖い思いしなくて済む。向こうも流石に海外まではついてこないだろうし」

「輝気はどうするの？」

「僕は平気だよ。前の生活に戻るだけだし」

「却下」

私の言葉にまた輝気はでもと言う。

「前の生活に戻しちゃ駄目なの、輝気にはもっと甘え方を知ってもらわないとね」

そう言って笑うと輝気は苦しそうな顔をした。

本当は自分でもわかってる。

輝気の言う通り帰るべきだ。

でも___。

帰ったら駄目な気がする。

私が消えるのが先か。

あの人が消えるのが先か。

もしくは彼が現れるのが先か。