9話 ページ10
｢おい説明をちゃんとしろ馬鹿野郎｣
｢電話や口頭で伝えるよりもわかりやすいだろう、合理的な判断だ。それで、お前はこの話を受けてくれるんだな？｣
｢これほぼ強制だろうが、それにあの子はもう完全に決定した体で話してた…っておい目をそらすな、こっち見て話せ｣
相澤の胸ぐらを掴んで、恐らく酷い形相になっているだろう私の姿は、どう見ても不穏な空気に見えるだろう。第三者が見れば、痴話喧嘩と勘違いしてもおかしくない状況だ。唯一の救いは、寮の玄関口から少し離れたこの場所に、人通りは全くないということだった。
(…私が母親なんて、柄じゃないだろうに)
相澤の胸ぐらを掴む手の力は弱めずに、ただ単純にそう思う。母親のような温もりや優しさなんて、私にはどう見ても無縁だった。普段着なんてほぼ黒スーツのようなものだし、目元はキツくつり上がっていて、子供にとっては怖い以外の何物でもない。さらに、このなりで、自分に愛想もさほどないのを自覚していた。
あの後、壊理にはやんわりと肯定して、緑谷と通形に彼女を任せることにし、相澤の首根っこを掴んで寮を出たのだが、壊理の見えないところで説明もなしにこれとはどういうことかと彼に問いただしても、当本人は実に冷ややかな顔をしているばかりだった。
｢''お前''本当に……｣
｢変わらないな、頭に血が上ると口が頗る悪くなるのは。｣
子供の教育上悪いから今後は控えろ、と言う相澤に、誰だって怒ればそうもなるだろうと心の中で悪態をつく。どうしてこうも、この男は自由なのだろうか。
まあどちらにせよ、話を聞かない訳には何も出来ない。私は相澤の胸元から手を離して、ゆっくりと深呼吸をした。
｢……で、あの子は一体なんなんだ。母親になるかどうかはまだ決め兼ねるが、話によっては承諾してもいい。｣
正確には承諾してもいい、では無い。これは既に承諾済みとして、相澤の方で話が進んでいるだろうから。少しの皮肉も込めて、肯定するかどうかはこちら次第、という言い方をすると、相澤は少し不機嫌そうに眉をひそめた。
｢……まぁいい、今から彼女についてと、これからお前にしてもらいたいことを話す。ただし、他言はするな。｣
｢しないよ、誓ってね。｣
ようやく話してくれる気になった相澤に、わざとらしく胸の前で十時を切るジェスチャーをして見せる。ちらりと寮の方を見るが、壊理達が見えるわけでもなく、ただガラスに反射した陽の光が、白く写っていただけだった。
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なっつ(プロフ) - このお話めちゃくちゃほっこりして大好きです！！更新楽しみです！ (2021年8月23日 14時) (
レス) id: 7aeb4072e1 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - エリちゃんと相澤先生大好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます！！ (2021年8月23日 8時) (レス) id: e6ef6aa37c (このIDを非表示/違反報告)
海月 - 続き待ってます!! 楽しみに読んでます 応援してます (2021年8月14日 10時) (レス) id: 715b9b383e (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - めっちゃ好きです（*｀・ω・*） (2021年8月13日 21時) (レス) id: 7bc3a22003 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 続き…続きはどこに?めっちゃ面白かったです!!応援しています!! (2021年8月12日 10時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年7月29日 2時
