16話 ページ17
ーー時刻は深夜3時半を回った頃。
丑三つ時に仕事用の携帯が微かに振動したのを感じ、目が覚めた。
この時間に電話がかかってくること自体は珍しいことではなく、言ってしまえば日常茶飯事。ヒーローになりたての頃は慣れずに大変な思いをしたが、もう数十年もたった今ではものの数分だけでも、深く眠れるようになっていた。
ーーそれは、とても誇れたものではないが。
｢こちらレインクロード｣
腕の中で眠る壊理を起こさないように、そっとベッドを抜け出して玄関口で電話に出る。電話の相手は確認するまでもなく、私の管轄している横浜の直属の上司だった。
『横浜の○○区工場跡地にて、ヴィランの会合が行われているとの情報が入った。今すぐ現地に向かいヴィランの殲滅、及び複数人の捕獲を願いたい。』
｢…今日は非番のはずでは？｣
『現在管轄内のヒーローは別件で市外だ。動けるヒーローがいない。それに夜は』
｢君も都合がいいだろう｣と電話越しに嘲笑するような声。不快に思いながらも、適当に相槌を打って電話を強制的に切る。ヴィランの情報はこの後メールで届く手筈だ。これ以上会話を続ける意味は無い。
ふうっと息を吐いて背筋を伸ばせば、不思議といつもの倦怠感はなく、頭はすっかりと冴えていた。
｢…目覚めが頗るいい、壊理のおかげかな｣
ーー今日くらい、一緒に寝ていてもバチは当たらないだろうに。
壊理の頭を撫でて、名残惜しくもその手を離し、準備を始めた。携帯を操作しつつ、手際よくヒーローコスチュームに腕を通す。携帯画面に相澤消太の文字をみつけ、登録番号に電話をかけると3コール目で出た彼の声は枯れていて、今まで眠っていたのだと直感した。
｢すまない起こしたか。｣
『いや…､仕事か』
｢ああ、すぐに終わらせるつもりなんだが｣
｢壊理のそばにいてやって欲しい｣と伝えると、相澤はわかったとだけ返事をして電話を切った。睡眠時間も多くない彼を起こしてしまったという罪悪感があるが、どうしても彼女を1人にはさせたくなかった。
電話があって数十分たった頃、到着した相澤と入れ替わるように部屋を出ようとすると、夏だと言うのに廊下は寒いくらいに冷えきっていて
先程の温もりを思い出して億劫になる体を、無理矢理動かして玄関から出る。
｢お前が帰ってくるまで部屋にいる。帰りは何時頃になりそうだ？｣
｢明け方には。…壊理を頼むよ｣
相澤にそう言い残すと、足早に寮を後にした。
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なっつ(プロフ) - このお話めちゃくちゃほっこりして大好きです！！更新楽しみです！ (2021年8月23日 14時) (
レス) id: 7aeb4072e1 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - エリちゃんと相澤先生大好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます！！ (2021年8月23日 8時) (レス) id: e6ef6aa37c (このIDを非表示/違反報告)
海月 - 続き待ってます!! 楽しみに読んでます 応援してます (2021年8月14日 10時) (レス) id: 715b9b383e (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - めっちゃ好きです（*｀・ω・*） (2021年8月13日 21時) (レス) id: 7bc3a22003 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 続き…続きはどこに?めっちゃ面白かったです!!応援しています!! (2021年8月12日 10時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年7月29日 2時
