14話 ページ15
「すっごく、広い！」
「私がここにいた時こんなに広かったか…？」
広々とした室内に、大きな湯船が１つ。サウナ付きで充実した入浴場は到底普通には見えないが、”あの”雄英ならばあり得ると、半ば無理やり納得することにした。
壊理が滑らないように手を繋ぎ、ゆっくりと中に入る。
「ほらここに座って、頭を洗おう。」
「私、自分でできるよ？」
「私がしたいんだ、させてくれ」
少し困惑気味の壊理にそう言って微笑んで、彼女を自分の前に座らせてシャワーのお湯を出す。
目元に水がいかないように、額のあたりに手を置いてゆっくり髪を濡らしていくと、水が入りそうで怖かったのか、壊理はぎゅっと目をつむっていた。
その光景がとても愛らしくて、思わず笑みが溢れる。
「ふはっ、そんなに怖がらなくてもいいんだよ壊理。」
「なんだかムズムズする…、変。」
「すぐになれるよ」
そう言って彼女の髪を洗い始めた時、ふと彼女の背中のあるものに気が付く。
「……。」
無数の痣と、切り傷。
それは紛れもなく、彼女がこれまで受けてきたもの。決して消えることはない、過去の跡だ。
よく見てみれば背中だけでなく、手足にまで及んでいるそれに、思わず息が詰まるのが自分でもわかる。
ーーこんなに小さな体で、１人で、どんなに辛かったか…
「…Aさん？どうかしたの？」
「いや、なんでもないよ。ほら、洗い流そう！」
壊理の声に慌てて我に帰り、傷のことには触れず、たわいない話をしながら彼女の髪や体を洗い終える。
それからは自分もパッと洗って、再び壊理と手を繋ぎ、浴槽へと足を運ぶ。彼女が転けないように体を支えながら、ゆっくりと湯船に浸かると、不思議と疲れも流れていくような気がした。
深く息を吐いて、グッと手を上へむけ、背筋を伸ばす。
「これは極楽だな。」
「ごくらく？」と首を傾ける壊理に、私も釣られて首を傾けて考える。
「あー、湯船に浸かるとあったかくて、疲れなんて吹き飛ぶだろ？」
「うん」
「そういう時に極楽って言うんだ」
そういうと彼女はなるほどと頷いて、
「ごくらくだ」
と先程の私のように息を吐きながら言う。
その姿があまりにも不自然で親父くさくて、愛おしい。そんなこと考えていると、無意識のうちに壊理の頭を撫でている事に気がつく。
「…Aさんは、どうして頭を撫でるの？」
「うーん、なんでだろうなあ」
それだけは自分でも、よくわからなかった。
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なっつ(プロフ) - このお話めちゃくちゃほっこりして大好きです！！更新楽しみです！ (2021年8月23日 14時) (
レス) id: 7aeb4072e1 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - エリちゃんと相澤先生大好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます！！ (2021年8月23日 8時) (レス) id: e6ef6aa37c (このIDを非表示/違反報告)
海月 - 続き待ってます!! 楽しみに読んでます 応援してます (2021年8月14日 10時) (レス) id: 715b9b383e (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - めっちゃ好きです（*｀・ω・*） (2021年8月13日 21時) (レス) id: 7bc3a22003 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 続き…続きはどこに?めっちゃ面白かったです!!応援しています!! (2021年8月12日 10時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年7月29日 2時
