11話 ページ12
先程の彼女の震えた姿が、脳裏をよぎった。
あんなに小さな子供が怯えきった表情で、走り回ったりすることも無く、誰にも迷惑をかけないように大人しくしていた。
(違うだろう、そんなの『子供』じゃない。)
子供はもっと、自由に外を駆け回っていいのだ。わがままを言って怒られて泣いて、楽しい時には大声で笑って。そんなふうに、間違った｢大人｣のなり方なんて、しなくていい。
｢いいよ、相澤。｣
｢…！本当か？｣
｢まあ最初は、何馬鹿なこと言ってるんだって思ったよ。｣
頭を上げた相澤に、フッと笑った。
この話を受けることについて、全く悩んでいなかったといえば嘘になる。だがーーーー
｢想像してしまった、あの子が普通に笑えるようになったその時のことを。｣
無邪気に笑って、どんな些細な変化にも気づいて、喜んで。そんなごく普通な日々を送る、普通の子供になれた彼女を。今思えば彼女の笑顔がみたい、その一心だった。
｢受けるよその話、私は壊理の笑った顔が見たくなった。せめて彼女が普通の生活を送れるその日まで…、彼女のそばにいよう。｣
相澤の目を今度は私から見つめてそう言うと、彼はどこか安心した表情で一言、｢ありがとう｣と言った。
｢なんだよ、嬉しそうな面してるな相澤。｣
｢…うるさい。早く中に入って改めて挨拶してこい。｣
｢はいはい｣
茶化すとすぐに不貞腐れた相澤に背中を押されて、私は再び寮の方へと引き返した。
ーー壊理の好きな食べ物はなんだろうか？好きなものは？行きたい場所ややりたいことは？
色々なことを考えながら、寮にたどり着くと壊理と通形、緑谷がなにか楽しそうに話をしているところが見えた。それでも、壊理の顔はどこか寂しげで、笑顔には程遠い。
(あの子が、笑えるように。)
何にも怯えず、好きに笑えるようにしてあげたい。
子供らしくわがままを言って、泣いたり怒ったりするあの子がみたい。
｢壊理｣
寮に入るとこちらに気づかずにまだ談笑中のようだったので、彼女の名前を呼ぶ。
壊理は私に気づくとゆっくりと、こちらに歩み寄った。まだ表情は硬いままだったが、緑谷達と話して、だいぶ緊張がほぐれた様子だったので安心する。私は屈んで目線を合わせて、壊理の手を握った。
｢君のことが知りたい。｣
｢私の事…？｣
そうだ、といって私は壊理の体を抱き上げる。軽くて小さな体は、ふわりと宙に浮く。
｢壊理、私を君のお母さんにしてくれ｣
ーー私は君を、救いたい。
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なっつ(プロフ) - このお話めちゃくちゃほっこりして大好きです！！更新楽しみです！ (2021年8月23日 14時) (
レス) id: 7aeb4072e1 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - エリちゃんと相澤先生大好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます！！ (2021年8月23日 8時) (レス) id: e6ef6aa37c (このIDを非表示/違反報告)
海月 - 続き待ってます!! 楽しみに読んでます 応援してます (2021年8月14日 10時) (レス) id: 715b9b383e (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - めっちゃ好きです（*｀・ω・*） (2021年8月13日 21時) (レス) id: 7bc3a22003 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 続き…続きはどこに?めっちゃ面白かったです!!応援しています!! (2021年8月12日 10時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年7月29日 2時
