はるの恋びと

01.出逢 ページ1

〆．



もこもこのコート、赤いチェックのマフラー。



それでもしのげない寒さに身を震わせていた。



２月の中頃、夕方……もう日の暮れる時間。



駅からバスで30分ほどかかる場所にある博物館でのアルバイトを終え、駅に向かうバスを待っていた。



「あ、凍ってる」



昨日の雨でできた水たまりは既に冷たい塊と化しており、冬を改めて感じる。



博物館の閉館時間から一時間経ち、バスで通勤している職員さんたちも一本前ので帰っていった。



次に来るのは18時ちょうど発、あと15分ほどでここに来る。



５分間くらい停車して、出発。乗客は私と、ちょっと残ってたであろう職員さんが一人、二人。



ガラ空きの車内を求めて、あえて時間をずらしている。



バス停のベンチ、濡れてなくて良かった。



三人がけの端っこに座り、曇天を見上げた。



はぁ。



声にならないため息を吐き出す。今日も頑張ったなぁ、という意味を込めて。



白い息が空気に溶けるのを見届け、再びマフラーに顔をうずめた。



「あの……っ」



〆．

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