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グレーのスーツは、風磨に良く似合っていた。
"いつもよりカッコいい。" そう私が言うと、手で口元を隠す、照れた時の癖が出た。
「照れてるの?」
「は?!」
「ふふ、可愛い、風磨。」
なんて言うと、少し拗ねた表情をしつつも、私の手を握ってくれた。
その手があったかくて、思わず私はギュッと力を込めて握り返した。
すると風磨もふわりと笑ってくれて。
あぁ、幸せだなぁ。って。
「こんな正装をして、どこへ行くの?」
「Aちゃんにぴったりの場所。」
まるで悪戯を考えついた小さな子供のように、風磨は笑った。
風磨の手に引かれ、着いた場所は大きなビルの最上階にあるレストランだった。
「予約してた菊池です。」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
そこでもまだ風磨は手を繋いだままで、周りからの視線が熱く感じた。
「こちらのお席でございます。」
「うわぁ。」
言葉を失う、とはこう言う事なんだろう。
窓越しに見える夜景は、東京を一望出来る。
「気に入ってくれた?」
風磨は私を椅子に座らせるだなんて、普段ならやらないエスコートまでしてくれた。
「うん。とっても。凄い綺麗。」
「よかった。Aちゃんがこういうの好きじゃなかったらどうしようかと思った。」
「どうして?」
「ほら、前に星の事を可哀想、って言ってたでしょ?こんな人工的な光、もっと好きじゃないかと思って、不安だった。」
メニューを見ながら苦笑いする風磨に、心底申し訳ないと思った。
「そんなこと、ないよ。」
「そう?よかった。あ、すみません。これで。」
割と軽く流した風磨に、少しの違和感を抱きつつも、料理が届くまでは笑い混じりの楽しい会話をしていた。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時