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Kento
「へぇ〜。いい部屋じゃん。」
「おう。」
「なに？乗り気じゃないの？」
「部屋探してるのバレて、親父が用意した。ここ。」
夏の期末テストが終わった頃、風磨に引っ越しの手伝いを頼まれた。
予定より少し早いなぁとは思っていたけれど、そういう事か。
「家賃は？」
「学生の内は親父が出してくれるらしい。まぁ、きっとここへはあまり帰らないよ。」
「勿体ないな〜。部屋余ってるなら俺が住んでやるよ。」
「ははっ。男と二人暮らしとか勘弁。女の子呼べないじゃん。」
「そこかよ。」
実家からは電車で40分ほど。学校へは20分。
「線変わったからもう一緒じゃなくていいよ、朝。」
「あ、おけ。」
「なに？寂しいの？」
電車の路線が変わったから、もう風磨とは登下校出来ない。
あの優越感に浸れる時間が無くなるのは、少し寂しい。
「中島はほんと俺の事好きだよなー。」
「は？」
「冗談だよ。そんなマジな顔すんなよ。」
俺にとって、風磨からの "好き" はどれだけ特別なものなのか、風磨は知らないだろう。
「まー、でも男同士は無いよな。そういうのに偏見がある訳じゃないけどさ、俺は無理だわ。」
外は暑いくらいなのに、俺の心は世界中の冷蔵庫が一気に開け放たれたかのように冷え切った。
もちろん、分かってはいたことだ。
風磨はノーマルだし、俺だって風磨の前ではノーマルとして生きてる。
他の男でもいいのか？と聞かれれば風磨しか無理だから、そういう出会い系とかもしていない。
別に女を抱けない訳でもないし。
「あ、わり。大丈夫？」
「う、うん。」
でも、やっぱり風磨はかっこいい。
1つ下だし、小さい頃は可愛い弟だなんて思っていたのに。
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作者名：はる | 作成日時：2018年3月3日 19時
