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私は今、珍しい人に呼び出されていた。
「久しぶりだね、渡辺さん。」
「どうも。」
「そんなに固くならないでよ。ほら、俺風磨の幼馴染だし。」
そう言った彼は、漆黒のコーヒーを一口飲んだ。
「今日はね、話したい事があって。」
「はい。」
「俺の事、なんだけど。」
伏し目がちに少し気まずそうにそう言った彼は、この前詰められた時の雰囲気とは打って変わって、切なく儚げな表情をしていた。
「それ、私が聞く意味ありますか?」
「うん。あるよ。渡辺さんだから聞いて欲しい。というか、聞いてもらわなければならない。」
さっきの表情とは違い、しっかりと目を合わせて、硬い決意をしたように見えた。
「きっとこの話をした後、キミは凄く俺に偏見を持つかもしれないし、引くんだろうと思う。それにこれは今までで1人にしか話した事無いから、俺もちょっとビビってる。」
次は少し苦笑いしながら、またコーヒーを一口飲んだ。
表情がコロコロ変わるなぁなんて、呑気に考えていたのだけれど。
「...少し長くなるんだけど、時間は大丈夫?」
「はい。今日は風磨が遅くなるので。ある程度は。」
「ははっ、そっか。なら話すね。」
そんなに口を開きにくい話なのか。
だから今日は大学の食堂の隅ではなく、人の少ない穴場のカフェに連れてきたのか。
ゆっくりと話し始める彼の言葉を一言一句逃さないように、しっかりと耳を傾けた。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時