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あれから随分と街を徘徊して、風磨にとっても似合うイチゴのショートケーキなんかをお洒落なカフェで食べたりなんかして、いい時間になった頃に実家に戻った。
初めて会う風磨とお母さんのはずなのに、すっかり仲良しになっちゃって。
お父さんも "風磨!" なんて呼ぶくらい。
お姉ちゃんも、甥っ子を抱く風磨を見て、"慣れてるのね!" なんて感心していた。
"弟と妹が居たので。" なんて風磨の言葉に胸を痛くしたのは、きっと家族では私だけだろうけど。
「凄くいい家族だね。」
「そう?」
「うん。あったかいと思った。そりゃ、Aちゃんみたいないい子が育つよ。」
「私は、いい子なんかじゃない。」
風磨は何も言わずに優しく私の手を包んでくれて、なんだか、それに自分の存在意義を感じた気がして、安心した。
「寒い〜。」
「寒いね。はい。」
風磨の家に戻り、晩御飯を食べた後、お気に入りのブランケットに包まってソファーに座って居た。
そしたら風磨があったかいコーヒーを持って来てくれて、"俺も入れて" なんてブランケットの中に入って来た。
「今年は雪、降らなかったね。」
「雪?」
「うん。雪のイブには願いが叶うって。」
そう言った私を、風磨は笑った。
それに拗ねて、窓側を見ていると、ふわりとブランケットでは無いものに包まれた。
まぁ、その主は風磨で、ブランケットの中で私に抱きついていた。
驚いたのも束の間、振り向くと頰にキスされた。
「俺はもう、願いが叶っちゃったから、雪なんてどうでもいいや。」
なんて言って、さっきまで私がしていたみたいに、窓の外を眺めた。
風磨は、いい匂いの香水と、煙草が混ざった匂いがする。
それは、気分を害するモノではなく、むしろ心地いい。
この匂いに包まれて 死 に た い と思うくらいに。
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作者名:はる | 作成日時:2018年3月3日 19時