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暫くは携帯を握りしめて待っていたけど、なんだか眠気が襲ってきてうとうとしていた。
「Aちゃん。」
「ん?あぁ、風磨。」
「鍵開けとくなんて物騒じゃん。」
どうやら、私はソファーで寝ていたらしい。
風磨が私の手から落ちた携帯を拾って、ローテーブルに置いた。
「うーん。でも風磨この家の鍵持ってないでしょ?」
「じゃあ、ちょうだい?ケーキと交換。」
おかしい。
ケーキと家の合鍵が交換。わらしべ長者なの?
「ない。」
「え?」
「合鍵、2個しかなくて。ひとつは大家さんが管理してて、もうひとつは勝利が持ってる。その前は聡が...」
急に雨が降った日とか、洗濯機が壊れたとか、私は何かと勝利を呼ぶことが多いから。
...まぁ、勝利が合鍵を使って入ってきたことなんて無いし、聡と別れた時に返してもらったやつを自分で持っておきたくなくて、勝利に渡したんだけど。
「...あ。」
「そう。気付いた?」
やたらと不機嫌そうな顔をした風磨が、すぐそこまで迫ってきていた。
後ずさろうとしたけど、ここはソファーの上。逃げられない。
「...ま、いいや。松島もバカだよなぁ。Aちゃんみたいないい女捨てるとか。」
「え?」
風磨はサッと私の上から退いて、ケーキの箱を開け始めた。
「ん?何?期待した?」
「違う!そんなんじゃない!」
「Aちゃんって嘘つけないタイプ?」
「うるさい。」
「続きは俺の家帰ってからね?ここは狭いし壁も薄いから。」
ブワッと自分の顔に熱がこもったのが分かった。
風磨が爆笑して "ケーキのイチゴくらい紅い" なんてバカにしてくるほど。
「風磨なんて大嫌いだ。」
「あ、そんなこと言うんだ。」
ニヤニヤが抑えきれていない風磨が、近い距離をさらに詰めて横に座る。
「なによ。」
私の中で全力で風磨を睨んでみるけど、効果はないみたい。
「Aちゃん。大嫌いって、好きな人にしか言えないらしいよ?」
まただ。
よく分からない理屈を風磨はいくつも思い浮かぶ。
でも、それが当たっているのも、また真実だ。
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はる(プロフ) - あらたさん» あらた様 うわー!本当ですね!すみませんご指摘ありがとうございます!これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2017年11月6日 2時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - 設定に変わってしまっているのかなと思います。なにか考えがあってでしたら申し訳ありません。これからも更新楽しみにしております! (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
あらた(プロフ) - こんばんは!初めまして。作者様の書かれるストーリーだけでなく、言葉や作品の雰囲気やリズムなど全部がツボです(;_;)作者様のお話が大好きです〜!それと私の間違いだったら申し訳ないのですが、68では主人公は夏生まれとなっていますが70では11月?あたりの→ (2017年11月5日 4時) (レス) id: b48a22250f (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 未空さん» 未空様 もったいないお言葉をありがとうございます!これからもよろしくお願い致します。 (2017年10月26日 1時) (レス) id: ab803b53a8 (このIDを非表示/違反報告)
未空(プロフ) - 今1番好きな作品です!続き楽しみにしてます! (2017年10月24日 0時) (レス) id: 0d0a977df5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はる | 作成日時:2017年9月13日 2時