第六羽 ページ9
「目覚めと出会い」
誰か、誰かいないだろうか。
優しくて、死期が見えなくて。母の様な方はいないのだろうか。
自分は壊れてしまっている、そう自覚せず得なかった。
音が鳴っている、心拍を測るように心拍計が機械音を放つ。
「お腹…空いた」
見慣れた顔、でも何処か窶れているような…
力なく微笑む私を強く抱き締める愛しい人。
「腹が減っただけか？何処か痛いとかは？！｣
ヨハンが慌ただしく起きて
「い、医者を呼んでくるよ！」
そう言って病室を飛び出す。
「私確か…あれ…なんだっけ…っ！？」
右腕が一瞬痛む…。あぁ、この手で君を傷つけてしまった…
「ごめ…っ」
キスされる、ここから先は言わないように、言えないように…
「これでナシだ、良く起きてくれたな」
目を見つめて笑うダンテ、貴方は照れくさくないのかな…私はとても恥ずかしい…
暫くの沈黙を破るように医師と隊服を着た連絡係が部屋に入ってくる。
「クロハ少佐、急ぎ任務です。」
重く話し始める連絡係。
「急ぎの…任務？」
ダンテが待て、と云うのを静止して。
「研究所から人工天使が逃げ出しました。もし可能であれば保護を、不可能ならば人工天使を抹殺して下さい」
訳が分からない。人工天使って何？そもそも殺せって？
「何で私が…」
「要件は伝えました。」
そう言うと連絡係は部屋から出ていく。
「ヨハン、人工天使の説明をクロハにしてくれ。俺は座標を掴む。」
ダンテはかけてあるコートを羽織ると外に出る。
「…わかった」
ヨハンがクロハの前に座って話し始める…
「私は、殺したくないです。」
ベッドから車椅子に変える。廊下を進みながらヨハンと会話する。
「優しいんだね」
立ち止まるヨハン。
「優しい…？だって…その子達には罪はないんですよ？殺す意味が見当たらない。｣
「じゃあ、立って歩いて話さなきゃね。彼女達と」
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