泣きたい程に ページ18
赤い月が空を照らしている
「不気味だな…」と一言零す
まるで俺と同じ色だ
帝国からの刺客 それを処分するのは騎士団長である俺の仕事だ
赤い 赤くて
最初の頃は抵抗があった
人を殺すなんて
でも、一人の笑顔を護りたいから
俺は何でもできる…気がする
リヴァに仕えて100年？それ以上経ってるか…
あいつの趣味も時と同じで変わっていく
ある時は人を壊す事にハマり
ある時は優雅な食事にハマり
ある時は国を滅ぼすことにハマって
そして最期には
「飽きた」
の一言で全て辞めてしまう
贅沢と言えばそうなのだろうか…
永遠とは辛いものだと…俺も痛感している
この身は今こそ不老不死だが…
昔は俺も一瞬の事に一喜一憂していた
今回はそんな俺の生きていた頃の話…
…
初任務、森の魔獣退治だったか…
騎士に成り立ての俺はその日、失敗しないように…
かなり意気込んでいた…
「頑張らなきゃな！」
でも、魔獣は結構強くて 新人の俺にはキツかった…
「っ…クソ！！まだだ…っ！」
でも、そうだな…なんて言っていいか…
アイツが来たんだ、その場に偶然…
「…死にかけの騎士様、力が欲しい？」
全てを諦めた目で俺を見つめるあいつの目は…
悲しそうで
「あぁ、欲しいさ…俺はこんな所で死ねない…っ！」
何が、俺をそうさせたのかは覚えていない
「そう、貴方の刻を代償に力を与えてあげる」
刻と引換に…？最初は何を言っているか 理解が出来なかった
俺から落ちる赤い雫が…留まる
その時に確かに俺の刻は止まったんだ
魔獣を倒した後
左頬に鋭い痛みを感じた
「な…なんだ…？」
あいつは狂ったように笑いながら
「ｸ、ﾌﾌﾌｯ…！まぁ、痛みに耐えられたら…だけどね」
泣き叫ぶ俺をみて あいつは笑っていた
痛みが引いて 痛みなんて感じない程に泣き叫んだ後
「あ、生きてた…死んだかと思ったわ」
「お前、誰なんだよ…」
「貴方の護るべきものって言ったらお分かりになるかしら？騎士様」
「…まさか…第一王女…？」
「私は寛大だからね、少しの無礼は赦すよ？」
「数々の無礼…っ」
「だから良いって そうそう…貴方が泣き叫んでる間に…私の…いえ、元王は死んだけどね？どうする？｣
「…俺はもう貴女の剣です」
「いい事教えてあげようか？」
「？」
「人にしてあげたことは忘れろ、人にされた事は忘れるな… 私は恩なんて売ってないよ」
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作者名：夢無 | 作成日時：2016年11月7日 16時
