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5曲目 ページ7

「えっ…と。次は…」
星川先輩は立ち上がると、私達に手招きした。
「次のパートね。トロンボーン。こっちだよ」
すたすたと歩いて行く先輩を見失わないように、慌てて中にいるトランペットの先輩達に頭を下げた。
「ありがとうございましたっ」
グループのふたりも一緒に頭を下げる。
「バイバーイ」
先輩達は、陽気に手を振ってくれた。
星川先輩は隣の空き教室を通り超して、その更に隣の教室の扉を開ける。
「響ー!次の子達よろしくー」
(響…?)
星川先輩の後ろから、教室の中を覗き込む。
「はいはい…っと。入ってー!」
聞き覚えのある声がした。
教室の中へ入ると、丁度椅子から立ち上がった響先輩がいた。
「あれ!Aちゃんじゃん!」
「…こんにちは」
ぺこりと頭を下げると、響先輩はいきなり私達の背中を押して、強制的に椅子に座らせた。
「じゃ、さっそくだけど体験いくよー!トランペットとだいたい同じよ」
「いい加減すぎ!」
隣にいた先輩が、響先輩の頭を叩いた。
「いでっ」
響先輩は叩かれた頭をさすると、説明に戻った。(「暴力反対!暴力反対!」と聞こえた気がしたけど、気のせいだったのかもしれない)
「まぁ、百聞は一見にしかず、だ!吹いてみて!吹いて!お願い吹いて!!」
先程響先輩を叩いた先輩が響先輩をじとっと睨みつけたため、響先輩は尻すぼみになった。
一年生にそれぞれ先輩がついて、教えはじめた。
私はなぜか…響先輩だ。
「よろしくお願いします」
響先輩に向かって頭を下げる。
「ん!よろしく!」
人懐こい笑顔を向けられ、ただいい加減な先輩…という私のイメージが少し変わった。
「さっき言った通り、トランペットとだいたい同…」
パーンッといい音がして、響先輩の頭を、例の先輩丸めた紙がヒットした。
「…じなんだけど、ちょっと違う!いや結構違う!違うの!違うから!」
叩いた先輩は手の上でパンっパンっと紙を弾ませながら、響先輩を見下ろしている。
「うわああ!ちょっと、ヤメテ!Aちゃん困ってるから!時間終わっちゃう!」
先輩はまだ響先輩を睨みつけていたが、引き下がった。
「ふぅー…ごめんねーAちゃん」
「いえ…」
響先輩は私の横に座り込んだ。
「じゃあ、マウスピース。吹ける?」
手渡されたマウスピースは、トランペットのよりずいぶん大きい。
「大きい…」
思わずぽつりと呟く。
「トランペットがちっちゃいんだって。あんなの吹ける気がしない」
「はあ…」
トロンボーンは、低い音が印象的だった。

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夜桜(プロフ) - Mさん ありがとうございます! (2017年9月16日 20時) (レス) id: 3ea5d81375 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 更新がカタツムリってかわいい表現ですね。タイトル好きです。 (2017年9月12日 13時) (レス) id: e7bec98917 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - わああああテキストが終わりませんっ!更新がカタツムリになりそうです! (2015年12月27日 19時) (レス) id: 3f7ebbf011 (このIDを非表示/違反報告)
ジャック - 続編待ってるよん 執筆編集頑張れ (2015年12月27日 18時) (レス) id: 183314bc64 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - 途中のところで話を挿入してますのでご了承くだされ。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 44e047bbf3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜桜 | 作成日時:2015年4月21日 20時

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