2曲目 ページ4
私は今、走っている。
音楽室へ向かって。
今日から仮入部が始まる。
あの日、吹奏楽部への入部を決めた私は、周りから心配されるほど音楽の勉強に打ち込んだ。
まあ、今までろくに勉強などしてこなかったのだから心配かけても当然といえば当然だろう。
もちろん、音楽など微塵もやったことがない。
楽器といえば、小学校の授業でのソプラノリコーダーくらいだ。
自分がここまで音楽に取り憑かれることになるとは…いったい誰が予想しただろうか。
「はぁっーはぁっー」
息を整え、音楽室の扉を見上げる。
先日と変わらない扉が、そこにあった。
まだ誰も、先輩たちですら来ていない。
鍵も掛かっていて、私はその場に立ち尽くした。
「…」
額に浮かんだ汗を拭いながら、壁に寄りかかって頭をつける。
(吹奏楽部…か)
どんな部活なのだろう。
そういえば、吹奏楽部のことを何も知らない。
(楽しいのかな…大変っていうのは、聞いてるけど…)
私はひとり、《吹奏楽部》と書かれた古ぼけたプレートをみつめながら考え続けていた。
「あ…」
そばでチャリッと金属音がして、我に返った。
そちらを向くと、音楽室のものと思われる鍵を手にした女の子がいた。
名札の色は…青。三年生だ。
「…こんにちは」
とりあえず、礼儀として頭を下げた。
「こんにちは。…吹奏楽部希望？」
その人はにっこりと笑って私に聞いた。
「はい」
「私、部長の秋川いろは。よろしくね」
私は、早くもこの吹奏楽部の部長に、好印象を抱いた。
「はい…よろしくお願いします。柚月Aです。」
もう一度、ぺこりと頭をさげた。
「よかった。礼儀正しい子が来てくれて。
うちの部は、そういうの厳しいからさ」
そう言いながら、秋川先輩は鍵穴に鍵を差し込んだ。
「こんなに早く来てるなんて。…音楽好きなの？」
「私…音楽、やったことなくて。なんとなく聞いた先輩の演奏に、引き込まれてしまって…」
言いながら、だんだん恥ずかしくなった。
(軽い気持ちで来たように思われたかな…)
秋川先輩は、私の気持ちを知ってか知らずか、
立て付けの悪い扉と悪戦苦闘している。
「…大丈夫。そういう人ほど、よく伸びるものだよ」
「…っ」
思わず秋川先輩を見ると、秋川先輩は振り返った。
「"ピアノが弾けるから" "これしか特技がないから"…そうやって、業務的に入る人はたくさんいる。でも、柚月さんは"吹奏楽をやりたい"という素直な気持ちで来てくれた。それが何より、私は嬉しいの」
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夜桜(プロフ) - Mさん ありがとうございます！ (2017年9月16日 20時) (
レス) id: 3ea5d81375 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 更新がカタツムリってかわいい表現ですね。タイトル好きです。 (2017年9月12日 13時) (レス) id: e7bec98917 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - わああああテキストが終わりませんっ！更新がカタツムリになりそうです！ (2015年12月27日 19時) (レス) id: 3f7ebbf011 (このIDを非表示/違反報告)
ジャック - 続編待ってるよん 執筆編集頑張れ (2015年12月27日 18時) (レス) id: 183314bc64 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - 途中のところで話を挿入してますのでご了承くだされ。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 44e047bbf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜桜 | 作成日時：2015年4月21日 20時
