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意識が浮上する。そのまま目を開ければ、どこか知らない場所にいた。薄暗くて、硬い。身動ぎをすれば、ジャラ、と金属の擦れる音がした。手が繋がれている。どこかの呪詛師の仕業だろうか。そもそもどうしてここに来たんだっけか。



 
「お久し振りですね、A様」



 
ぼーっとしていれば(脱出方法を考えるべきなのだろうが、頭が働かなかった)、上から声がした。目の前に立っている男は、影でよく見えないが、その口は弧を描いている。何処の命知らずの呪詛師かと思えば、その口振り的に、五条家の人間だろうか。
 



「……誰」

「A様の世話係をさせて頂いていました者です」



 
そう言えばそんな人もいたかななんてぼんやり考えながらあぁ、と感情の籠っていない声で相槌を打った。すると目の前男は笑顔を崩して此方を見下ろす。あーあーそんな怖い顔して、ウケる。あたしが何したっての。



 
「俺はずっとオマエが嫌いだったんだよ。その見た目も、奇跡だと言われた力も。人間じゃねえみたいなオマエが」



 
特に何も思うことなく彼の吐き出す愚痴を聞き流していた。人間じゃないみたいな、ね。確かに自覚はある。屋敷の人達は皆あたしの事を畏怖や恐怖の目で見ていた。すぐに慣れたけど。皆があたしのことを人間として見ていないことなんてとっくのとうに知ってる。



 
「で?何でここに連れて来た訳?殺すの?売り飛ばすの?」



 
どうしたって逃げられる自信があったから、そう聞いた。彼は首を横に振る。殺すでも売るでもないとしたら、何か利益になることがあるだろうか、と。
 



「その余裕顔がムカつくんだよ……っ」
 



そいつがあたしの制服の胸倉を掴み、ナイフを振り上げる。振動で脳がぐらりと揺れ、目眩がした。あれ、何で、上手く術式が、使えない。ビリ、と音がして、中に来ていたシャツごとボロボロに破けてしまった。しかも雑に振り下ろしたから肌も傷付いた。ガーゼも剥がれちゃったし。

あぁ、そういうことか。何となく目的が分かって、どうしようかなと周りを見渡した。何か使えるものないかな。
 

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ただのバカです - 作品読ませて頂きました!こ、更新ってもうされませんか?俺この話結構好きで。リクエスト募集してたらなんですけど、禪院直哉くんお願いしていいですかね?直哉くんデレデレでもええですよ!読んでくれてるか分かりませんが続き楽しみに待ってます。 (2022年10月27日 20時) (レス) id: 37480b1f74 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2021年3月15日 12時

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