第二十九話 ページ31
「……いっちゃん?」
難しそうに何かを考えている岩泉に対してAは声を掛ける。声を掛けられた岩泉はそれに反応し、考えるのをやめた。
「どうしたの?」
「なんでもねえべ。」
岩泉は誤魔化すように彼女から目線をずらして床を見始めた。
その態度を見たAはムッとし、「いっちゃん!!」と強く呼び掛ける。
「それいっちゃんの悪い癖だよね。都合が悪い時必ず私から目線ずらすよね。」
図星だった岩泉はそのキツい言い方に思わず黙り込み、それを拒否するように「都合がいい事と悪い事があるんだべ。」と言う。
その返答にAは「今はそういうの関係ない。」と言うが、岩泉はそれでも頑なに黙っているだけだった。
その様子にAは諦め、無理強いする事をやめた。
「いっちゃん。行こう。」
「……どこに。」
「いっちゃんの家。制服走りにくいし、それ汚れているし。」
Aは岩泉の着ている制服を指さし、そう言った。岩泉は指差しされた位置を見てみると確かに制服は泥まみれだった。
真っ白なブレザーに茶色があちこち付いてて汚れが目立っていた。
「ああ、さっき逃げてる時に被ったやつか……」
「着替えよう。」
「今自分の家に帰りたいとか思ってねーんだけどな。」
岩泉は制服に付いた土を払うが、まだ残っている。
Aは「なんで?」と岩泉に問う。
「こんな状況で自分の家がどうなってるか気になってこえーよ……。」
Aは「そうだった。」と苦笑する。
そして、会話は続かなくなり、なんとしてでも会話を繋げようとAは「じゃあ、暗くなる前に安全そうなところ探そうよ。」と彼に言う。
図書室の時計は四時を指している。
臨時集会があったのは昼の時間大体一時くらいだろう。
「……臨時集会からもう時間が経ってるんべやな。」
岩泉はAの意見に賛成し、「そうするか。」と言い、立ち上がる。
そして、安全を確認し、少女に警戒しながら階段を降り、外に出る。
外はもう夕焼けで魔法陣と共に赤く染まっていた。
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作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年7月26日 21時