第十九話 ページ21
その物体が放出された時、誰もかが死を覚悟していた。
避ける暇もこれぼっちも作れない。あの破壊力を見た上で希望を持つ余裕もあるのだろうか。
その刹那ーー。その放出された物体に巨大な白い雷が放出された。
その白い雷と相殺したのか、強い暴風が代わりに彼女等を強く吹き飛ばした。
一瞬何が起こったのか分からなかった彼女等はその眩い光と暴風を浴びるだけだった。
やっと強い光と風が収まった途端、Aは「うっ」と小さな呻き声を上げ、チカチカとして収まらない目の違和感に思わず擦ってしまう。そして、露出していた膝から少し上の太もも、頬、手に自然についてしまった擦り傷や膝についた深い傷を気にしながら、相殺された力の持ち主だった少女が立っていたところを見る。
少女の姿はなく、月のクレーターの様な凹んだ穴の中に赤と黒が混じったような灰が残っていた。
状況が良く分からなかったAは周りと白い雷が放出された位置を見ようと見上げた。
上から放出されたようだ。
しかし、上には何も無く、不気味な魔法陣が広がっているだけだった。
良く使っていた屋上の方にも人の姿すらも見えなかった。
そして、周りには自分と同じように擦り傷等を負って倒れている人も、苦しそうに起き上がっている人もいた。
「みんな……。大丈夫?」
ある程度動けるようになったAは倒れている人を優先して重傷を負っていないかどうかを確認した。
Aに呼び掛けられて反応を示す人も、虚ろな目でパチパチとする人も居た。
特に重傷を負った人がいない事を知ったAはホッと安心し、フラフラと安定しない体制で立ち上がり、辛そうに深い傷を負った膝を引きずりながら周りを警戒し、急いで保健室に向かった。
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作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年7月26日 21時