第九十二話 碧斗side ページ47
「あー。碧斗ー。こっちで呼んだ方が落ち着く。」
そりゃね。
名字よりも名前の方が呼びやすいし。
「俺もだよ。僕よりも俺の方が言いやすいってあれね。」
「ねえ。なんで僕等に名字が付いたんだろね？家族なんていないのに。」
「元々孤児だったからね。でも、一人で生きていけたよ。俺らは。」
親の顔なんて知らない。
本当の親の愛情も知らない。
「うん。確かに一人だけでも生きていける。星翔はずるいよね。親もお姉さんもいる。」
「まあまあ。それは星翔が望んだことだから。俺達が口出せるような事じゃない。」
星翔が望んだことを僕らが口出ししても意味無い。
彼は自分が冒した罪を償うためにそれを望んでしまった。
僕らは何も望まなかったというのに。
「でも、星翔は僕を見捨てた。」
「同じ顔で生まれてきただけマシじゃない？」
まだそう思ってるんだね。
「そりゃあ。そうだけど。僕にとっては。」
「君の気持ちもわかるけど、彼は罪を冒した。」
全ての罪。
始まりの罪。
僕らはやってはいけない禁忌を冒した。
「あれは本当にダメだって何度も言ったのに。」
「世界を壊したかったんだろうね。でも、俺らもそれを望んでいた。だけど、あれは想定外。」
でも、世界を壊せたおかげで今の世界が出来てるんだけどね。
それなりに代償はあったけど。
「っていうか、寒いでしょ。ここで話してないで中に入ろか。」
家の目の前にいると言うのに無駄な話をしすぎてずっと外にいてた。
うーん。寒いなあ。
僕らは家に入ってコートを脱いだ。
「しばらく帰ってなかったけど大丈夫かなあ。」
「あの子なら大丈夫。」
ぱっと見れば普通の家。多分ね。
すると、内側からガチャりと鍵が開く音がした。
ドアの向こうから現れたのはまだ幼い少女。二人組。
良かった。生きてた。
「詩羽。詩葉。元気？」
「お兄ちゃん。遅い。」
「あ、星音お兄ちゃんもいる。」
「やはーい。」
名前似てるけど血は繋がってないんだよねえ。付けたの僕だけど。
「詩羽と詩葉。また未来見たでしょ。」
使うなって何度も言ってるのに。
言うこと聞かないから困るなあ。
「だってお兄ちゃんに伝えたいことあるのに帰ってこないんだもん。」
「それはごめんね。」
「ねえ。女王様目覚めたよ。」
「知ってるよ。」
そこから、僕らは耳を疑うような話が出てきた。
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「また女王様が世界を壊す。」
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作者名：名無し琲世 | 作成日時：2017年9月12日 17時
