第五十九話 岩泉side ページ14
「じゃあな。生きろよ。」
部屋内側にいる花巻からそんな事を言われた。
生きろ？
お前はどうなるんだよ。
お前を見捨てて逃げろと。
そんな事出来るか。
「花巻！！開けろ！！」
花巻の言う通りにせずにガチャガチャとドアノブを引っ張っても動かない。鍵を掛けられた。
なんでだよ。なんで開かないんだよ。
クソ。
なんでこんな胸糞悪いこと俺に押し付けんだよ。
『きーらきらきらと。きーらきらと。』
魔法少女のあの歌声が流れてくる。
ちくしょう。
なんでお前が俺なんかの為に身代わりすんだよ。
後味悪い別れ方すんじゃねー。ふざけんな。
でも。
花巻の犠牲を無駄にするわけにはいかない。
急いでAがいる一階に降り、部屋に向かう。
「いっちゃん？」
乱暴にドアを開けたせいか、Aは酷く驚いた顔で俺を見てくる。
戸惑ってるAに説明している場合でもない。
「ここに毛布は無かった。他の家探すべ。」
Aの手を強く握って無理矢理引っ張って外に出ようと思ったけど、Aも俺の手を強く握り返して「待って。」と呼び止められた。
「なんで外に出るの？別に毛布無くても中にいるだけでも良くない？それにまっきーは？」
Aの問いになんて言えばいいのか分からなかった。
確かにAの言う通り、毛布とかなくても中にいれば大丈夫。
でも、そうしてる場合じゃねーんだよ。
「いいから。早く外に出るべ。」
「嘘つき。」
Aは顰めた顔で困ったような顔で怒ってるような顔でそう言ってきた。
「さっきも言ったじゃん。いっちゃんって都合悪い時そっぽ向くじゃん。なんでそっぽ向くの。」
その言葉にハッとした。
忘れてた。俺の癖。
長年ずっといるせいでそういうことも見抜かれているという事も。
水と白の件も。そうやって誤魔化してた。
「なんで。嘘つくの。そんなに私の事信じられない？」
泣きそうな顔をしている。
それでも、今は嘘をついてでもAを連れ出さなきゃいけない。
どうする。
どうすれば。
本当のことを言うしかないのか？
そうか。それだ。
「後で。本当のこと言うから。今はそれ言ってる場合じゃない。後で言う。約束する。」
「本当に？本当に言うんだよね？信じるよ？」
なんとかAを納得させれた。
急いで玄関の方に向かう。
でも、後で本当のことを全て話さなきゃいけなくなった。
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作者名：名無し琲世 | 作成日時：2017年9月12日 17時
