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第五十八話 花巻side ページ13

こんなにぐちゃぐちゃになっているAを初めて見た。
一応付き合いは長い方だし、同クラになる事だって多かったのに。悔しくて泣いてるところはよく見てたけどこんなに酷く取り乱すことは珍しいとしか言えない。
国見もそうだった。無気力でだるそうにしてる奴だったけど、国見も金田一を失ったことで取り乱してた。

こえーな。
俺もいつかなりそーだわ。
相手は誰か知らんけどな。Aはあからさまに心が不安定な状態。
メンタル強そうなAでもああなるんだ。

「岩泉。」

「なんだべ。」

俺は恐怖心を捨てようとするために無理にでも笑ってきたけど、あんなAを見ちゃったら、俺も不安定になりそーだわ。

「これって普通なら不法侵入だよな。やばくね。」

だから。例え相手が岩泉だろーと、笑って誤魔化す。
そうした方が俺らしいし、不安なところもかっこ悪いところも隠せれる。

「今は法とかかんけーねえべ。こんな状況で不法侵入だとか騒いでるやつの方がアホだろ。」

「確かにそーだわな。」

こんな状況でも岩泉らしーわ。
岩泉が一番メンタル強いんだろうな。
羨ましい。

そうしてるうちに、何かの部屋に入った。
うーん。夫婦の寝室かな?ベッドが二人分のサイズになってるし。
毛布一人にしたら大きいんだけどその方が暖かそーだしそれでいっか。

「でけーな。でも、これで十分か。」

「そーだわな。」

二階からそれを運ぶの大変だけど、逃げる事とか考えれば一階にいた方がマシだな。
岩泉と俺は二人分の毛布を抱え、部屋を出ようとする。
その途端、吹いてこないはずの吹雪が音を立てて俺たちの方に吹いてきた。
少し寒かった部屋が更に寒くなってきた。

なんでだ。窓は開いてなかった。
それにここは二階。
割れる音とかも全然しなかったのに。

「岩泉。」

「ああ。」

冷や汗をかきながら恐る恐る後ろの方を見る。
窓の方に人が立っていた。

『こんばんは!おにーちゃん!』

マジかよ。魔法少女じゃないって信じてたのに。
その期待さえも裏切られた。
ったく、しゃーねえなあ。

俺は岩泉を廊下側に突き飛ばし、ドアを閉める。
鍵付きドアだったのがまだ幸いだった。
岩泉は反対側から強く叩いてくる。

「岩泉!!Aと逃げろ!!」

「ふざけんな!!」と怒鳴る声が聞こえてくる。
逃げ切るには、誰かを犠牲にしなきゃいけない。

分かってくれよ。

「じゃあな。生きろよ。」

岩泉。A。




















ハッピーエンドを。

第五十九話 岩泉side→←第五十七話 貴方side



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作者名:名無し琲世 | 作成日時:2017年9月12日 17時

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