第五十六話 国見side ページ11
寒い。
もう歩けない。
待って。待ってください。
岩泉さん。
花巻さん。
桐崎先輩。
……
足が震えてもう歩けない。
力が抜けたようにガクっと座り込んでしまう。
動け。
動け！！
なんで動かない。なんで逆らう。
「お、あ……ッ！！」
喉も凍ったように刺々しくて痛い。
声が出せない。
頑張っても、吹雪がそれを阻んでくる。
手も、もう感覚がない。
少ししか動けない。
体の震えが止まらない。
体の感覚すらもなくて、動こうって思っても動けない。
凄く眠い。
深夜だからかな。
視界がだんだん掠れて真っ白な世界しか見えない。
なんでこんな時に。思ってしまうんだろう。
なんで生きたいだなんて。
金田一が死んだ時、死にたいって思ってたのに。
生きたい。
死にたくない。
なんのために生きればいいのか分からない。
分かるのは金田一を死なせてしまった罪を償わなきゃいけない。
違う。
金田一のために生きなきゃいけない。
死にたい。
生きたい。
誰かが俺を呼び掛けている。
誰。
見えない。
白くて。見えない。
白くない。黒い。
全身真っ黒。
誰だ……。
『きみ。大丈夫？』
黒い人って危ないなんとか言ってなかったか。
あれ。誰が言ってた？
『理性も失いかけてるよ。』
『ザンネンな結果になってしまうね。』
残念？ザンネン？
何が？残念？
俺が死んでしまう現実？
『きっとそうだよ。』
顔も見えない。
黒い。
『綺麗で美しく黒くなってしまうんだ。この世界が。』
『来世も無い。』
来世……？
死んだ後の転生先？
何を言ってるんだ。
分からない。
頭も朦朧してきて追い付かない。
今の状況に。
『とでも言ったら、きみはどうする？』
どうするかって？
そんなの無の世界に還るって事を言いたいのか？
ってしか思い付かない。
『はあ。きみ。そのままだと凍死コースだね。喋れないみたいだし、動けなさそうだし。』
凍死……？
確かに寒くて動けない。
酷く眠いし、生気が奪われるような感覚。
『希望なんてないんだよ。この世界に。』
『結果はすべて終焉になるんだからね。』
しゅ……え……ん……？
ダメだ。
意識が掠れてきてる。
『んー。やばーーな？きみ。そろーー。』
聞こえる言葉も時々途切れてて聞き取りにくい。
『だからさ、ーー』
ーー……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名無し琲世 | 作成日時：2017年9月12日 17時
