【Q:K】この先も、ずっと #2【izw】

　　　　　　　　　 ページ8

・









　静まり返った社内。相変わらず日々忙しい伊沢さんは収録へ、会社に泊まるらしい福良さんと河村さんは夕食の買い出し、他の皆さんは既に帰っており、今は川上さんと私しかいない。


　長らく続いていたタイピング音がデータを保存したのと同時にようやく止まった。ちゃんとできているか確認したあと、椅子の上で伸びをする。






「 もう終わったん？ 」


『 はっ、はい！ 』


「 じゃあ俺も終わるから待っといて 」


『 …………………………はい？ 』


「 飯、行きたいから 」


『 あ、なるほど 』






　ぽん、と閃いたように手を叩くと、「アニメかよ」と笑われる。それにへへっ、と笑い返して荷物を鞄に纏めた。









　十数分後、微睡み始めていた私は人の気配を感じて覚醒する。目の前には川上さんの顔が。






「 ごめん、終わったよ。行ける？ 」


『 ん…はい 』


「 じゃあ行こか 」






　川上さんが歩き出したのを見て立ち上がった。一応伊沢さんには連絡しておこうと思い、小走りしながらメッセージを送る。``ながらスマホ´´を推奨している訳じゃないですからね。




　雑談を交えながら道を進んでいく。到着したのは、いつも皆さんが利用しているらしい居酒屋さん。私はあまり外食や飲み会などに参加しないから、こういう場所はとても新鮮で嬉しい。


　中に入れば「いらっしゃいませー」と軽快な挨拶が聞こえてきて、突然のそれに肩が跳ねる。前言撤回、やっぱりこういう場所は苦手だ。


　個室に通され、面と向かって座る。何度か店員さんが出入りして、緊張で固まってしまった私の代わりに川上さんが色々注文してくれた。こういう時まで私の要望を聞いてくれるところもすごく尊敬している。


　全て済むと室内に静寂が流れた。なにを話せば良いのか知らないし、そもそもどうして誘われたのか全然分からない。どうしよう、なに話そう…






「 緊張しすぎやろ 」


『 わっ、あ、はい 』


「 そこは相変わらず治ってないんやな 」


『 あはは…でもかなり軽減されましたよ 』


「 確かに 」






　届いた飲み物を煽り、軽い会話から近況報告まで。ここまで躊躇いなく話せる人は少ないから、ついついくだらないことまで話してしまう。伊沢さんとは別の意味で楽しい。






「 …石森 」






　お互いのテンションが上がってきたところで、川上さんが真剣な眼差しを向けながら私の名前を呼んだ。









→

　　　　　　　　　→←``さよなら´´より

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す