桜の木 ページ48
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今日も彼女は、見知らぬ誰か告白されている。
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大学の敷地内に植えられている大きな桜の木。そこは学生の中でも話題になるぐらい有名な告白スポットで、週に一、二人は想いを告げる場所。
俺は見たことしかないのだが、あんな人通りが多い場所でよく告れるよなぁ。振られたら恥ずかしいとか思わないんだろうか。知らんけど。
誰かに聞く訳でもない疑問について考えながら構内を歩いていると、見知った人が小走りで校舎から出てきた。一応手を振ったのだが、彼女は俺に気づかず、そのままどこかへ消えていく。
気になって着いていけば、さっき見上げていた桜の木の下で足を止めた。そこへ男性が一人走ってきて、彼女の前でブレーキをかける。
なにか話しているような気はするが、ここから声はあまり聞こえない。どうせ告白してるんだろうけど、肝心の彼女は困惑している様子だ。
男性が頭を下げるや否や、彼女も深々お辞儀をして頭をあげる。きっと断ったんだろう。だけど、男性はまだ諦めずに頭を下げ続けていて。挙げ句の果てには戸惑って抗う彼女の腕を掴む。
「 流石にやりすぎです。彼女、困ってますよ 」
気づけば俺は、男性と彼女の間に割り入っていて。手首を離させて睨むと、男性はあっさり諦めて逃げるようにその場から立ち去った。
意外に根性はなかったらしい。まぁそんな奴が彼女を守れるとは全く思わないし、暴力沙汰にならなくてよかったと心の底から安心した。
「 怪我してない? 」
『 うん、大丈夫。ありがとう 』
「 そんな涙目で言われても説得力ないよ 」
『 うるさい。びっくりしただけだもん 』
「 はいはい 」
拗ねたように頬を膨らませる彼女の頭を撫でると、わずかに赤みが帯びた目を瞬いて涙を拭う。安定したところで、どちらともなく歩き出した。
俺がちょっと前を進むと、雛のように後ろを着いてくる彼女。どこへ行くのか知らないが、このまま会社に向かうのかもしれない。今日は撮影なかったよなぁと考えていると、
「 わっ、冷た、 」
『 えへへ、あげる 』
…彼女は、不意打ちでこういうことをする。お礼だなんて言いながら俺の好きなミルクティーを買って、屈託のない、満面の笑みを見せて。
彼女の行動一つ一つに、俺の心は跳ねっぱなしで。あれを無意識でやっているもんだから、とてつもなく恐ろしい。
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音々(プロフ) - 神威-αさん» 全然大丈夫です!ありがとうございます! (2021年3月8日 23時) (レス) id: 713cea38c0 (このIDを非表示/違反報告)
神威-α - 音々さん» 分かりました。僕が書こうと思っていた話に被らないようにしたいので短くなるかもしれません。あと、『お疲れ様』の石森ちゃん視点の話も書こうと考えているので遅くなると思います。それでも大丈夫ですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
音々(プロフ) - 神威-αさん» 私自身、生理前とかって少し注意された(怒られた)だけで泣きたくなったりするので誰かに怒られて悲しくなるみたいなのがいいです! (2021年3月8日 16時) (レス) id: 713cea38c0 (このIDを非表示/違反報告)
神威-α - 音々さん» ありがとうございます!そんな風に言って頂けるとすごく嬉しいです。リクエストもありがとうございます。図々しいだなんてとんでもありません!ぜひ書かせてもらいます。ところで``色々´´とありましたが、なにか具体的にあったりしますか? (2021年3月8日 16時) (レス) id: 60ae3ef212 (このIDを非表示/違反報告)
音々(プロフ) - 更新お疲れ様です!すごく涙が出て悲しくなったり、思わずニコニコしちゃうような話もあったりして、毎日楽しく読ませていただいています。図々しいですがリクエストで、色々あって不安な夢主ちゃんを慰めるというお話が見てみたいです!これからも応援しています! (2021年3月8日 0時) (レス) id: 713cea38c0 (このIDを非表示/違反報告)
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