【Q:K】この先も、ずっと #2【izw】

私にできること ページ31

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「 こんなの、クイズじゃない… 」






　これを言ったのは、あの社長を心から尊敬している山本さんだったか、最近の社長に違和感を抱き始めていた福良さんだったか。正直、細かくは記憶にない。


　ただ、画面内で早押しボタンを構える見慣れた姿。それを見せる彼の笑顔が苦しんでいるように感じたのは、きっと私だけじゃなかっただろう。


　最近もまた忙しく、テレビで見ない日がないくらい出演している伊沢さん。クイズ番組を始め、たくさんのバラエティーにも呼ばれている彼は、一言に纏めると輝いていた。


　彼が活躍した番組を会社のテレビで皆で見ることは恒例になっていたし、その中で優勝したりすると全員が自分のことのように喜んだ。


　とても盛り上がって、楽しんでいたのだ。









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　いつ頃からだったのだろう、今日みたいに不条理なクイズ番組へ呼ばれるようになったのは。


　内容はゲストの得意ジャンル、且つクイズ王だからと伊沢さんに重すぎるハンデを背負わせてのプレイ。経験者ではない私や、乾、ノブ君にでも分かるほどの理不尽な問題だった。


　圧倒的に不利な状況。彼に答えられるはずがなく、苦戦するのは目に見えている。だけど、そんな中でも企画をやめる訳にはいかないらしい。


　奮闘している伊沢さんに、芸人さんは辛辣な野次を飛ばし、俳優さんは苦笑いをした。肝心の彼は、司会の方にコメントしながら営業スマイルを返していて、






「 理不尽だ…クイズって言わないよ、 」


「 ほんと、ひどいね… 」






　小さく呟かれた言葉が執務室全体に響く。いつもはクイズでもっと賑わっている社内が、今は水を打ったように静まり返っていた。






「 伊沢さん、辛そう… 」






　こうちゃんさんがそう言ったのと同時に、乾が手をリモコンへ伸ばす。他の意見も聞かずに電源ボタンを押したけれど、その行動を誰かが責めるなんてことはなかった。


　それに、もし彼がやっていなかったとしても、私の方がリモコンの電源を押していたと思うし。


　テレビを囲んだ状態で座っている皆さんは俯き加減で、場の空気が悪いのは少し離れた場所から見ている私でも分かるほど伝わってくる。




　なぜか苦しい。とても、辛い。




　堪えきれなかったのか、林さんがいきなり椅子から立ち上がってデスクに行く。それを見た皆さんが各々仕事に戻り始めたのを確認して、私もパソコン画面へ意識を向けた。









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