BLUE. (ページ4)

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「これ、やるよ」

部屋の前に着いて、ヨーグルトと一緒に渡されたのは、私が指さしたアイスだった。一向に受け取ろうとしない私を見て、ユン·ジョンハンは無理やり私の手にアイスを握らせた。ありがとう、と訳の分からないままお礼を言うと、彼は満足気に笑って部屋に入って行った。

流石に今からアイスを食べる気にはなれなくて、冷凍庫にしまった。変なこともあるもんだ、と思いながら明日の授業の予習をしようと時間割を確認すると、明日の2限に英語の授業があることに気がついた。英語の成績が可もなく不可もなく、な私は今までこの授業を嫌だと思ったことはない。穏やかなおじいちゃん先生で、ゆっくりと進んでいく授業が心地よくて、どちらかと言えば好きな方だった。だけど今回ばかりは少しだけ億劫だ。もう関わることはないだろうと思いながらも、万が一を考えて頭を抱えたくなった。

「よ、キム」

ユン·ジョンハンは空気が読めないらしい。いつも通り前の方の席に座って授業を受けていたのに、授業終わりに友人と待ち合わせしている食堂に行こうとした私を見つけて声をかけてきた。ユン·ジョンハンの周りにいた女の子たちからの視線は勿論痛かったし、教室から出て行く人達がちらちらと見ていくのも慣れないもので辛かった。

『……どうも』

「なぁ、一緒に飯食わねぇ？」

その一言で周りの女の子たちの目が一層吊り上がったように見えた。断れよ、という圧を感じて首を横に振ると、ユン·ジョンハンはにやりとしながらあろうことか耳元で囁いてきた。

「アイスとヨーグルト代ってことで」

『は、』

「ほら、行くぞ」

周りの女の子たちを置いてけぼりにして、私の腕を掴みながら長い脚でずんずんと歩いているユン·ジョンハン。歩幅が違いすぎて後ろの私が小走りになっていることに、この男は気が付かないらしい。

『アイスならまだ食べてないから、返すよ』

「は、お前人の善意を返すってのかよ」

『善意っていうか、見返り求めてるじゃん』

ユン·ジョンハンは見た目に似合わず、かなりの悪魔らしい、ということが分かった。食堂で先に待っていた友人がユン·ジョンハンを見て目を丸くした。何、と目で訴えてきたので、よく分からない、とジェスチャーで返す。誰かに連絡するユン·ジョンハンを2人で不審な目で見ていると、向かいから2人組が歩いてきた。