BLUE. (ページ17)

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ミス·ミスターコンに出ることになって、思いがけず少し忙しくなった。と言っても、当日の衣装の採寸のために呼ばれることが殆どで、私はただ測られるだけで何もしてないのだけど。

周りの人は何か特技を披露したりするらしい。当日のステージで、投票前に見に来た人達に自分をアピールする時間があるらしく、そこで何か見せるのが恒例だと、ハニが教えてくれた。当の本人は何もする気がないらしい。特技がないのではなく、そんなもの披露しなくても自分で決まりだそう。実際、ハニを推す声は多いし、普段の人気ぶりを見ても納得。ドヤ顔で言うハニには複雑な気持ちを抱くけど。

一方の私は、これといった特技もなく、人前で何かをするのも苦手だから、正直何もしたくないというのが本音。じゃあ何もしなくていいじゃん、と軽く言うハニは何も分かってない。私はミスになりたいとかそういう気持ちはないし、自分をアピールする必要もないと思ってるけど、見ている周りの人からしたら、何アイツ、何で出場してんの、ってなるに決まってる。私が出たくて出るわけじゃないけど、そんなの周りの人は知らないのだ。迫りつつある学祭を考えると、自然とため息が増える。

「もうちょっと軟らかく動けないの？」

『…これが限界』

下手かよ、と悪態をつくハニをじろりと睨む。毎年恒例で、その年のミスとミスターは発表後に踊るらしい。出場者は万が一の可能性に備えて、事前に練習をしといてね、と言われたのだ。ほぼ確定のハニは、適当に踊ればいいんだろ、と言いつつプロ並みの動きを見せている。キムさん、ちゃんと練習しといてね、と何故か念を押された私は、ハニと一緒に練習するけど、ダンス経験もセンスも何も無い私はぎこちない動きしかできない。それでハニに呆れられてたところだ。

「…もし俺がミスターになったらさ、」

『ん？』

水を飲んでたハニが急に真面目なトーンになって話しだした。汗を拭いてた私はタオルを畳みながらハニの方を見る。

「ミスターになったら、俺のお願い、1つ聞いてよ」

やだよ、と軽く言えなかったのは、ハニの顔が真剣だったから。ジャイアン気質のある彼のことだから良くないことを考えてるんじゃないかって思うけど、それをいつものように口に出せなかったのは、彼の雰囲気があまりにも違ったから。

『……いいよ、』

承諾したことを、未来の私はどう思うんだろう。ならない可能性なんて、ほぼ無いのに。