BLUE. (ページ2)

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その日以来、また角部屋さんと会わない日々が続いた。凄く落ち着いた雰囲気で、大学生御用達のこのアパートに住んでいるくらいだからきっと大学生なんだろうけど、社会人だと言われたらそうですねと納得出来てしまう。生活のサイクルが違うんだ、と思い込むことにした。

私は友達をあまり家に泊めない。それは自分の領域に入ってきて欲しくないとか、そこまで仲の良い友人がいないとか、そんな話ではない。遊びに行って楽しくて、それでいいじゃんと思ってしまうからだ。同じ空間で1晩を過ごしたいという欲が単純にお互いにないだけ。

だけど角部屋さんは違うみたいだ。今日も人を呼んでいるらしい。賑やかそうで、彼女を連れ込んでイチャコラしてる様ではないみたいで、少し安心する。そういう声がモロに聞こえたら気まずくて仕方ないから。壁が薄いとそういう事もある。

何がそんなに楽しいんだろう、と思いつつ、これは泊まりだな、なんて変な予想を立てる。何人かで楽しく騒いでいる声を穏やかに聞けるくらいに今日は何だか機嫌が良い。

何となく冷蔵庫を開けて、朝に食べるヨーグルトが無いことに気がついた。大好物でもないし、これがないと一日元気が出ない訳でもない。いつもなら買いに行くの面倒だな、で終わるけど、今日は機嫌がいいし、お風呂上がりすっぴんでも気にしないや、と何だか楽観的だ。春だとはいえさすがに夜は寒いから、と大きめのパーカーを羽織って必要なものを持ってドアを開けた。

面白いことに、鍵を閉めてる間に角部屋の扉が開いた。お前ら覚えとけよ、とか言いながら不機嫌そうに出てきた男の人に私は見覚えがあった。

「…あれ、」

気まずい雰囲気の中、目が合ってしまって、無視するのも悪かったので小さく会釈をする。夜なので暗い筈だし、私は有名人でもなんでもないから相手は私のことを知らないだろう、と油断して、そのまま歩き出そうとした。

「なぁ、英語の授業、同じだよな」

だけど意外にも私のことを認識していたみたいだった。ユン·ジョンハン。整った顔立ちで凄く人気がある人だ。ただでさえ有名なこの人だが、私は1年の頃から英語の授業がこの人と被っている。そこそこ少人数に分かれてはいるものの、どちらかといえば前の方の座席に座る私と、遅く入ってきて最後列に座るこの人とでは接点があまりにも無いのに。