闇に手を伸ばす【HS】 (ページ5)

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目を覚ますと窓の外はまだ暗くて、時間を確認するとあと少しで始発の時間だった。隣を見ると裸のままのホソク先輩が寝ていて、昨日は気を失うまで求められていたけど記憶ははっきりしていた。…やらかした。夜の先輩は一人称が“僕”ではなくて“俺”になっていたし、もの凄く甘やかされてぐずぐずに溶かされた。A、といつもより数段低い声で耳元で囁かれて、びくりと身体が跳ねるのを見て面白そうに笑う先輩の顔は初めて見るものだった。

慌てて服を着て部屋を後にした。ホソク先輩が起きたあとの気まずさに耐えられる自信がなかったし、同じ服で出社することはどうしても避けたかった。電車を調べるために携帯を開くと元彼から不在着信が入っていた。“ちゃんと話をしよう”なんて。話すことなんて何も無い。昨日、あなたは来なかった。他の人に気がある。それだけ。

似た者同士だなんて言って慰めあっても、虚しさだけが残ってしまった。朝、目が覚めて、おはよう、と声を掛け合うことも無い。甘い朝を過ごすことが出来ないのは、特別な関係じゃないから。もう子どもじゃないけど、こんなことをしてしまうのは初めてで、上手く大人になりきれなかった私だけが残っていた。

YG「シャンプー、変えたか？」

「え、」

出社してユンギさんから言われた言葉に少し身構えた。朝にシャンプーなんて普段はしないから今日はやけに匂いが残ってしまったみたいだった。変えてないですよ、とだけ伝える。ユンギさんはそれ以上興味が無いらしく、行くぞ、と話を切り上げた。急だけど顔合わせな、と伝えられて会議室に向かう。広報1課との合同チームの顔合わせ。まだまだひよっこの私は恐らくチーム内で下っ端だろうな、なんて考えながら会議室に入った。

「ヒョン、待ちくたびれましたよ」

「ヤー、ユンギ！ヒョンと仕事できて嬉しいだろ」

YG「……うるせぇ」

会議室に入るなり凄まじく騒がしい雰囲気が襲ってきて、隣のユンギさんはげっそりしていた。今からでも降りようかな、なんて言っているユンギさんを必死で引留める。あなたが居なかったら私はやっていけません。

YG「てか、アイツは？」

もうすぐ来るよ、とソクジン先輩が微笑んだ。アイツ、が誰を指すのかは分からない。けどソクジン先輩は何度かお話したことがあるし、もう1人のナムジュン先輩も有名な方だから、一方的だけど、知っている人でよかった。