闇に手を伸ばす【HS】 (ページ14)

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慌てた顔をしながらそれを隠すようにわたわたと席を空けてくれたソクジン先輩。がちゃがちゃと危ない手つきで空になったジョッキをまとめるナムジュン先輩。割れそう…あ、倒れた。
澄ました顔でビールを飲むユンギさん。…飲めてない、溢れてる。
私とテヒョンオッパの登場に驚いているのは確かだった。だけどそんなに慌てることなのかな、と思う。テヒョンオッパは先輩たちと顔見知りのようだった。世間って狭いな。ジミニオッパを介して知り合ったそう。ホソク先輩を見て、テヒョンオッパがジミニオッパに耳打ちをした。にやにやと笑いながらジミニオッパもこしょこしょと話し出す。時たま私を見て大きく頷いたりもする。凄く気になる。話しかけようとして、さっきから凄く感じる視線の方に目を向けた。

きゅるきゅるお目目の知らない男性が私のことを見ていた。…いや、知らなくなんかない。私はこの人をどこかで見たことがある。

「あの、」

JK「“強いのを一つ”」

「あ、」

その人は意地悪そうにそう言った。私はこのセリフを口にしたことがある。…ホソク先輩と関係を持ったあの日、あのBARで私は確かにこの言葉を言った。

JK「ホソギヒョンがお世話になってます」

「え、…弟、」

JK「チョン･ジョングクです」

「パク･Aです」

JK「ジミニヒョンと似てないですね」

「よく言われます、」

JM「ちょっと！」

まさかのホソク先輩の弟だった。あの時のBARの店員さんで、最近よく聞くジョングクさん。ねぇ、と酔っ払ったホソク先輩が私の隣に来た。こてん、と私の肩に頭を預けるから、そこが熱を帯びたように熱い。せんぱい、と弱々しい私の声が聞こえなかったのか、頭をぐりぐりと擦り付けてくる。何してんだ、という目でジョングクさんが見てくる。実の弟の前でこんなことができるなんてお酒って怖い。先輩、と今度ははっきりと言った。動きをやめて、先輩じゃないよ、と言った。何、と聞く前に私の手をぎゅっと握りしめて、預けていた頭を起こして、私の目をじっと見つめる。私も酔いが回ってきたのか、ドキドキと鼓動が早まる。顔が熱くなって下を向くけど、Aちゃん、と優しい声が聞こえて結局は顔を上げてしまうんだ。

HS「ホソク、って呼んで」

みんなが見てる。言い訳なんてできっこない。意を決して口を開こうとした瞬間、ホソク先輩は目を瞑って、そのまま寝てしまった。はぁ、とため息をついた。呆れたのか、安堵なのかは分からなかった。