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HS「Aちゃん」
先輩はよく私のデスクに来るようになった。社内で人気のホソク先輩と話しているのを見られたら、先輩のファンに呼び出されてしまいそうだと不安になっていたけど、幸いそんなことは一回も起きていない。にこにことした表情で私にミルクがたっぷりのコーヒーを手渡す。目的が何か分からないまま受け取る私を見て更に頬を緩ませる。
甘い、甘い目をしている。そう勘違いしてしまうくらいに先輩は甘い。本当の先輩がよく分からない。もともと詳しいわけでも親しいわけでもない。どこにでもいる、ただの後輩の私。社内のホープの先輩。先輩が満足げに自分のデスクに帰っていった後で、小さくため息をこぼした。会議の資料を作る手を何度もとめそうになりながら、何とか定時に間に合わせようと必死になった。
“久しぶりにご飯行こう”
そう連絡が来たのはちょうど資料が完成したときのこと。定時を少し過ぎた頃。送り主はテヒョンオッパ。ジミニオッパの友達で何度も家に遊びに来てたし、何度か2人で遊びにいったりもしたことがある仲。とてつもなく顔が整っていて…私の周りってイケメンだらけだ。
待ち合わせをどうしよう、と考えながら取り敢えずエレベーターで下に降りると、ロビーの向こうにテヒョンオッパの姿があった。
TH「あ、A〜」
「テヒョンオッパ、!」
帰宅途中の女性たちがちらちらとオッパのことを見ながら通り過ぎて行く。当の本人は慣れっこらしく、いちいち気に留めたりしない。来ちゃった、と四角い口元を覗かせて、お腹空いたから行こ、と私の手首を掴む。パーソナルスペースが狭いのは知ってるし、何ならスキンシップも激しいのもいつものこと。
会社から出てきたユンギさんとソクジン先輩があんぐりと口を開けて私とテヒョンオッパを見ながら通り過ぎていった。何だかややこしい事になりそうだから明日あたりに誤解を解いておこう、と考えながらオッパの隣を歩いた。
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作者名:Hanavi | 作成日時:2021年3月21日 15時