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…一緒にいるだけで匂いって移るっけ。
どきり、と嫌な音が聞こえた気がした。それと同時にぼやける視界。嫌でも溢れてくる嗚咽を隠すために咄嗟に両手で口を塞いだ。
ずるずると壁伝いに力が抜けてしゃがみ込んだ。私とは違う甘い匂い。ユンギオッパからは香らない匂い。
HY「オッパ、」
YG「…ん、コーヒーでよかった?」
HY「はい、ありがとうございます」
扉の向こうから聞こえてきた声に意識が飛んでしまうかと思った。
いつから“オッパ”って呼ぶような仲になったんだろう。それは私だけの特権だと思っていたのに、こんなにもあっさりと奪われてしまうものだったなんて知らなかった。
私はコーヒーなんて飲めない。あの苦さが口に広がるのがどうしても苦手で、ミルクを入れてようやく飲めるくらいなのに。
どこまでも大人な彼女と、どこまでも子どもな私の差はどうにも埋まらないらしい。
JK「A」
「……ぐぅ、わたし、」
こんなときに隣にいてくれるのはグクだ。お前馬鹿だな、なんて言いながら乱暴に頭を撫でる彼の優しさを私は知っている。
JK「…なんで、ヒョンなの」
「…なんで、だろうね」
本当に、何でだろう。どうして、
「一緒にいるだけで、幸せだと思ってたのにな」
私の幸せは、ずっと8人でいることで。これからもずっとBTSでいることだったはずなのに。
そのためなら何だってできた。どんなに辛い練習も、容赦なく降り注ぐアンチにも耐えることが出来たのに。
誰かを好きになることが、こんなにも辛いことなんて知らなかった。こんなにも耐えられないなんて。私の居場所は誰にも盗られないと思ってた。だから、
「何も、望んでなかったのになぁ、」
涙で濡れた頬に、また一筋、涙が流れた。
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作者名:Hanavi | 作成日時:2021年1月21日 20時