嘘から恋は始まらない

09 Masaki ページ9

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「…将暉、」

「どうした？亮」


久しぶりに話しかけられた。コイツは変に俺に遠慮しているそぶりを見せる。


「ここなんだけどさ…、」

「あー、これな。これは…」


しているのは仕事の話。会話の途中にちらりと顔を盗み見ればやっぱり整ってるなと思う。Aはこういう顔が好みなんやな、とか。この顔やったら全女子が放っておかんな、とか。


「そういや今度の忘年会参加するんやってな」

「…それ色んな人に言われるんだけど、そんなに噂になってる？」

「なっとるわ」


コイツが飲み会系に参加するのは珍しい。といってもそれはここ一年の話なわけであって、それより前は普通に参加してたわけだけど。


「…Aには言わんでええの？」

「……何を、」

「お前らぎこちなすぎるんやわ」

「これが普通だから」

「名前呼びしてたのを名字呼びにするやつのどこが普通やねん」


俺が一番卑怯なのはわかっとる。コイツが何でこういう態度をとるようになったのか全て理由を知っている。Aがその訳を知りたいと願うのなら俺は伝えなければならない。

だけどそれを伝えてしまったらコイツを選ぶことが分かっていて、だからその時が来ないで欲しいと願っている。彼女が楽になって欲しいと願いながらも。

最大で最悪の矛盾。

彼女を幸せにするのは自分でありたいと願って願って、でもコイツには敵わないと思っていた。

一年前、転機が訪れた。俺はそのチャンスを手放すことができずにいる。活かすこともできない癖に。

Aを好きだと気づいたのはすごく早くて、だけど隣にいる彼女は他のやつを見ていた。

諦めようと思ったのに神様は俺で遊ぶ。俺はどうしたらいいのかわからずに宙ぶらりんだ。

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