嘘から恋は始まらない

05 Masaki ページ5

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「…で、そんなに落ち込んどるん？」

「別に落ち込んでなんかない！」

「でも酔うとるやんけ」

「お酒は飲んだら酔うものだもん」


だもん、とか反則やろ。
下心満載の男(おれ)と飲みに来ていちいち煽ってくるこいつは無意識、無自覚。

環奈ちゃんに彼氏がいた、という話でかれこれ一時間半。その間ちびちびとお酒を舐める俺。好きな子じゃなきゃ真っ先に帰ってる。


「…Aも彼氏欲しいとか思うん？」


喋りきったのか少し大人しくなった彼女に聞いてみる。本当は凄く勇気のあることだけどなんてことない風を装う。


「……私は、今はいらないの」


その言葉の裏に隠された意味まで分かってしまう。自ら傷つきに行くなんて馬鹿だと心の中の俺が嘲笑う。

彼女の返答は分かってた。もう一年も彼女はこの状況から抜け出せてなくて、もう一年も俺だけが隣にいるのに、何も変わらない。

そんなに俺は彼女にとって魅力がないのか。アイツと同じ時からずっと隣にいて、今ではアイツよりも長く隣にいるのに。

近いようで近くない。物理的な距離じゃダメなんだと本当に思い知らされる。心の中にはアイツが棲みついて、俺の入る隙なんてないくらい。

いつの間にか寝ていたAの顔を見る。
長い睫毛、白い肌。少し癖のある明るすぎない茶色の髪の毛もホクロが多すぎると不満を言う顔も、俺からしたら全てが魅力的で。


「何でこうも上手くいかんのやろな」


頬をするりと撫でて俺は呟く。
みんなみんな訳が分からん。何を考えているのかも、何をしたいのかも。

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