嘘から恋は始まらない

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「吉沢。これ、頼まれてた書類」

「…ありがとう」


お昼から帰ってちゃちゃっとまとめた書類を渡しに吉沢のデスクに行く。近くも遠くもないこの距離に今は何故か安心してる自分がいる。

ぱらぱらと軽く書類に目を通した彼は、もう一度ありがとうと言った。

それが何だかくすぐったくて、私はぎこちなく微笑むことしか出来なかった。

自分のデスクに戻ると斜め前に座る将暉が顔を寄せてきた。


「…今度、飯行かん？」

「いいよ。いつにする？」

「んー。明後日、とかは？」

「分かった。空けとくね」

「おん」


将暉とは仲が良い。
昔は3人で仲が良かったのに。将暉と2人だけでご飯に行くことなんてなかった。

だけど、“好きにならないから”と言われたあの日から私たちは変わってしまった。

それがどんな理由なのかは知らない。彼がどうしてあんなことを言ったのか。

だけど私にはそれを聞く勇気がない。今のこの状況が変わらないのは私のせいなのかもしれないと思うと気が重くなった。

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